そういう方たちが、若いバーテンダーの僕に、その古い感覚を押しつけてくることがよくあったんです。わかりやすいところだと、新しい感覚の音楽や、そういう流行をすぐに否定したり、古いスタイルの音楽を持ってきて、「林さん、これかけて」と押しつけてきたりします。流行に関することだけでなく、「社会とは、ビジネスとはこういうものだ」という話も、自身の成功体験だけを元に、とても主観的に話したりします。

 今、自分で書きながら、「誰にでも心を開けなくなってしまう頑固さ」も、「自分の成功体験に縛られて、他人に自分の価値観を押しつけてしまう頑固さ」も、どちらも今の自分自身のことだと、すごく痛感しています。こういう「経験が心の中に降り積もってしまって、動けなくなってしまう頑固さ」って、年齢を重ねるごとに出てきてしまうのかもしれません。

 僕は、誰かが頑固で面倒くさいことを言っていると、その場で、「ああ、自分も他の人から見ると、こんな感じなんだろうなあ」ってすぐに反省することにしています。そうやって考えると、その人のことは許せるようになります。

困った人を見かけたら
我が身を振り返ってみる

 長くなってしまいましたが、相談してくれた方が夫に対して、「なんか愚痴が多いなあ。頑固になっちゃったなあ」と感じたら、「私もそうなのかもなあ」と心を切り替えると、かなり許せるようになるかもしれません。

 あとは、我が家の場合は特にそうしていますが、とにかく妻に注意してもらっています。僕が「頑固おやじ発言」をしてしまったら、妻は即その場で否定してくれますし、調子に乗ったことを言ったら、「その程度で調子に乗るな」とすぐに言ってくれます。

 お二人の関係性や配偶者の方の性格もあると思いますが、そうやって夫が頑固発言するたびに指摘するのはどうでしょうか。もちろんいきなりそんなことを始めたら角が立つので、言ってすぐに、「私もそういう頑固なところあるから、そう感じたときは教えて」と付け足すのが良い気がします。