人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」「やるべきことが多すぎないか…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「精神論で部下を動かそうとするダメ管理職」のたった1つの特徴を解説する。(構成/種岡 健)
「文句」ではなく、
「事実」をベースに
ルールを変えるときに、
「朝令暮改と思われたくない」
という心理的な葛藤が生まれるはずです。
そこと折り合いをつけるのも、人の上に立つ人の責任です。
仕事における正解はつねに変わります。だったら、ルールも変えなければいけません。
その際、「ルールを変える人」を責めてはいけないということです。
人の上に立つ人だけでなく、下にいる人も、「仕組み」を責めましょう。
ルール変更を伝える場合も、「このルールはおかしい」と、不満だけを言わないようにします。
「このルールがあることによって、現場の作業に30分ほど時間がかかりすぎています」
と、事実を伝え、判断をあおぐようにしましょう。
問題意識を持つことは悪いことではありません。
仕組みでルールを運営すべきなのです。
「不満で仲良くなること」からは、もう卒業しよう
正しく情報を上にあげ、上の判断に従う。
そういう人は、いずれ人の上に立つようになります。
組織は、その順番で成り立っています。
ただ黙って我慢しろということではありません。
情報はどんどんあげればいい。
あくまで事実を伝え、それぞれの役割を果たしましょう。
この仕組みを理解できない人は、つねに文句を言います。
責任を果たしているリーダーや管理職に対してまでも、不満を言います。
そういう人に限って、文句をエサに仲間をつくり、つるみます。責任から逃れる、もっとも人の弱い部分だと思います。
そういう誘惑から線引きするのも、必要なことです。
仕組みをつくる側に回ってください。
本書を読んでいるあなたなら、できるはずです。
仕組みに立ち返れば、
どんどん「新しいこと」ができる
人の上に立つためには、「現場からの情報」を判断することが大事です。
自分の責任のもと、与えられた権限の中で、線を引いて決めるということです。その仕組みがあるから、1人1人、やることが明確になって動けるようになります。
線があるから、その内側が安全になります。
部署を横断して何かに取り組むときも同じです。
これは、あるメーカー企業の営業の話です。
自分の部署の商品を扱うのは、当然のことです。
ただ、その営業先で他部署が扱う商品が売れそうなときがあります。
そのときに、次のような2つの考えが浮かぶはずです。
「自分には何のメリットもないから、どうでもいいか」
「会社全体の売上につながるから、対応したほうがいいかもな」
そういう葛藤です。
その人は、必ず後者の考えを採用し、他部署に紹介してつなげているそうです。
なぜなら、その後、商談が成立したら、最初に紹介した人にもポイントが与えられるからです。
そのように、他部署にトスをあげる人がいたなら、それをポイント化して評価に組み入れるのです。
そういう仕組みがあると、社員はどのように日々を過ごすでしょうか。
自分の扱う商品だけでなく、自社の商品すべてに精通しようとするかもしれません。
仕組みがあるから、人は動き、部署を超えてつながるのです。
もし、これが精神論によって、
「自分の会社の商品にはすべて詳しくなるべきだ」
「部署を横断してコミュニケーションをとりなさい」
「愛社精神があればできるはずだ」
などと言われても、主体性がある一部の人しか動かないでしょう。
ダメな管理職は、ついこの言葉を口にします。
逆です。仕組みがあり、メリットがあるから、人は動くのです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)