火がつかなくて、その場で模索したり、みんなでいろいろ試してみたりして、やっと火がついて、やっと肉が焼けるから楽しいのに、一応親切心だろうから無下にもできないし、かといって全部やられてしまうと「うんざり」してしまいます。

 他には、「あなたのことを思って」系のアドバイスも話題になりますよね。代表的なのは親子関係で、時代が変わっているのに自分の価値観を押しつけてくる親ってよくいます。あるいは友人が、必要としてないのに「絶対にこういう服のほうがモテるから」ってアドバイスしてくるのもよくあります。

 これらは、「親切心」や「親子」や「友人」だからこそのアドバイスで、場合によっては助けられることももちろんあるわけです。だから、良いアドバイスの「境界線」ってすごく難しいんです。実際、僕は、冒頭の件のように、この業界の先輩からのアドバイスを受けたから上手くいった、という経験があります。

人にアドバイスする際
気をつけるべきポイント

 僕の場合、人にアドバイスするときは「自分の中で決めたルール」にしたがっています。

 まず基本的に、わざわざどこかに出向いてアドバイスはしません。SNSなどで見ていて、言ってあげたほうがいいのかな?と思うことがあっても、声をかけてその相手がなんとなくうまくいくよりも、自分でやって失敗して次の糧にすることも大事だと思うようにしています。

 でも例えば、お店に若い人が来て、「今度、バーをやろうと思ってるんですよ。どう思いますか?」って言われた場合は、「今って若い人、本当にお酒を飲まなくなりましたよ。バーはやめたほうがいいですよ」って言ってしまうんですね。

 僕自身26年間も現場に立っているし、わざわざうちのカウンターに座ってくれたんだし、相手から聞かれたことなので、「これは」と思って伝えます。もちろん「これはあくまでも僕の個人的な意見です」とも伝えます。だいたい、信念が強い人なら誰がなんと言おうとバーを開店しますし、そういう人じゃないと続かない仕事だとも思います。