笑顔の男性写真はイメージです Photo:PIXTA

嫉妬したり、喧嘩したり、泥沼にハマったり……すべての悩みは「人間関係」に由来する!?渋谷のワインバー「bar bossa」で25年店主を続け、延べ10万人の客を相手してきた著者が教えるコミュニケーション術とは。本稿は、林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)の一部を抜粋・編集したものです。

年齢を重ねた成功者は
自らの成功体験に固執する

 先日、僕のnoteに女性の方からこんな相談をいただきました。

「仲が良い夫婦だが、ここ数年どうも夫と話がかみ合わなくてお互いイライラしている。夫を嫌いになったわけではないのだが、大好きで尊敬していた人が、頑固で説教くさい老人になっていってる感じがして、悲しくてやり場のない怒りをぶつけてしまう。どうすればいいのか」

 というわけで、今回はこれを考えてみます。

 ある喫茶店店主の本にあったエピソードです。開店当初、「どんなお客様にも明るく接して心地よいお店にしよう」と思っていたその店主。あるとき一人の若い女性が来店しました。ランチを食べて、お茶を飲んで、デザートも注文した女性。お店をすごく気に入った様子で、店主との話も盛り上がったようです。その後、女性がお会計をしようとしたとき、「あ、財布の中のお金が足りない。今ちょっと銀行で下ろしてきます」と言って出ていったのですが、それっきり戻ってこなかったそうなんです。

 ショックを受けたその店主は、「どんなお客様にも心を開いて接客する必要はないんだな」と思い直しました。「世の喫茶店のマスターたちが、どうしてみんな頑固なのかやっとわかった。どんな人でも受け入れていると心が疲れてしまうんだ」と気づいて、それから自分も頑固なマスターになったそうです。

 このように、人が頑固になってしまう理由として、「こちらはとても前向きな気持ちでいたのに、理不尽な経験をして心を閉ざしてしまった」というのがあると思います。そしてもう一つ、人が頑固になってしまう理由があります。

 僕は若い頃からカウンターで「年齢を重ねた成功者」の方をよく接客しているのですが、そういう人たちは得てして「自分の成功体験に固執してしまう」ということがあります。例えば、クリエイティブなジャンルですごく成功して有名になった人がいたとします。でも、時代が変われば、その人の感覚ってすごく古いものになってしまいますよね。