ビデオ録画を始めたのは、全国の農家のインタビューで各地の方言が聞き取れないことが理由だった。ビデオを見返していると、かしこまったインタビューが終わる瞬間などに、ユーザー自身もはっきりとは意識していないであろうニーズが垣間見えることがあった。「こんな機能があると便利だな」といった本音が「ぼやき」となって出てくるのだ。それが製品改良のスタートになることを発見して以来、ニーズをキャッチする重要なツールとしてビデオ録画を活用し続けている。

 ドラッカー教授は次のように言っている。市場でトップの地位を獲得した製品・サービスについて、自らの手でそれらを陳腐化すべきタイミングを見逃さないよう常に意識するべきだ。しかし、現実では市場で首位を達成した企業が、競合他社に先駆けて自らを陳腐化する事はほとんどない。弱点攻略戦略が非常に成功しやすいのはそのためなのだ。

 次回は、すでに大きな市場があり、複数の有力な商品・サービスが展開されている状況であっても参入するのに有効な戦略を説明する。それは柔道戦略だ。