「アパート経営仕舞い」に
クリニック誘致は最適解!?

 この事例は、高齢になって管理を引き継ぐ人がいなくなった古アパートについて、「アパート経営仕舞い」をした事例といってよいものです。都市部の駅近物件など、非常に需要が高く家賃も高水準のアパート経営については、アパートの管理を管理会社に委託することで大家としての負担がない状態で収益を得ることも可能ですが、大企業やその工場周辺、大学や専門学校の近くなど大きな需要が見込める場合を除き、郊外では手間を掛けることなくアパート経営を行うことは簡単ではありません。

 アパート経営は家賃収入という不労所得が得られる一方で、その所得を維持するために多額の費用が掛かります。不動産業者に払う仲介手数料や、設備が壊れた際の修繕費のほか、エレベーターがある場合はそのメンテナンス費、定期的な外壁塗装費などを常に見込んで貯蓄をしておかねばなりません。また、空室がすべて埋まる保証もなく、新築の際には大半の部屋に入居者が付いたとしても、築年数を経るごとに入居割合は落ちることが通常です。郊外では築15年を超えたアパートでは、常に2~3割が空室であることも珍しくありません。このため、当初想定していた収益が得られず、ローンが返せないという事例も発生するのです。

 このように、郊外のそれほど家賃相場が高くないアパートの経営において収益を得ようとする場合、大家には大きな気苦労が掛かります。こうした物件を子や孫の世代に残した場合には資産を残したつもりが経費ばかり掛かる負の遺産にもなりかねません。特に、遠方に住む子や孫の場合は物件の状況を適切に知ることができないため、修繕やリフォームの判断のために頻繁に行き来をしなければならないという負担が発生してしまうのです。

 収益の確保のために、手間の掛かる郊外のアパート経営と比較すると、クリニックへの土地貸しは非常にリスクが低く手間が掛からない手段です。アパート経営に対する先行きの不安がある場合には、その不安を解消する有効な手段の一つといえます。