【生前贈与65年ぶり大改正】知らないと損する相続「3つの新ルール」とは教育資金の贈与非課税措置は2026年3年末まで、結婚・子育て資金の贈与非課税措置は2025年3月末まで、それぞれ適用期限を延長することになった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ここ数年、政府は生前贈与の見直しに向けて検討を重ねてきましたが、いよいよ2023年4月から、新しいルールに変わることになりました。そこで今回は税理士法人レガシィの新刊『【改正税法対応版】「生前贈与」そのやり方では損をする』(青春出版社刊)から大改正の3つのポイントについて抜粋し、紹介します。

日本中に激震が走った「令和5年度税制改正の大綱」の狙いとは

 2023(令和5)年4月、贈与と相続のルールが65年ぶりに改正されました。数年前から改正が近いと噂されていましたが、いざ詳細が明らかになってみると、関係者の間に激震が走りました。

 相続税や贈与税について定めた相続税法は、これまでも細かな修正が行われてきましたが、今回は生前贈与にターゲットを絞ったと見られる大きな変更です。生前贈与を活用した相続税の節税が以前より難しくなり、実質的な相続税の増税といってよいかもしれません。

 今回の改正の狙いがどこにあるかを考えてみましょう。

 税制改正に先立ち、2022年11月8日に内閣府の「相続税・贈与税に関する専門家会合」が提出した説明資料には、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」を目指すとあります。

 ここでいう中立的な税制というのは、「生前に贈与しても亡くなってから相続しても、課税額が変わらない税制」という意味と考えるとよいでしょう。つまり、資産を移動する時期によって税額が変わるのは「中立的でない」という議論です。

 これまで資産家の多くは、相続税と贈与税が別の税体系であることを利用して、生前贈与という方法によって相続税の負担を減らしてきました。しかし、「それは不公平であるから、相続税と贈与税を一体化して中立的な税制にすべきだ」というのが財務省の立場であることを示しています。つまり、財務省は生前贈与を活用した節税に対して、本気でメスを入れるつもりというわけです。

 そして、今回(2023年)の税制改正によって、それが具体的な形で示されたのです。

 贈与税改正の大きなポイントは、「生前贈与の相続財産加算期間が3年から7年に延長」「相続時精算課税の見直し」「教育、結婚・子育て資金の贈与の見直し」の3点です。

 それぞれについて、簡単に見ていきましょう。

(1)生前贈与の相続財産加算期間が3年から7年に延長

 贈与税に関しては通常、1月1日から12月31日までの年単位で区切って課税される「暦年課税」という方法がとられています。年ごとに贈与税を払ってしまえば(贈与額が年間110万円以下ならば贈与税は非課税)、贈与した人が亡くなっても、その金額は相続税課税対象から外されるのです。

 ただし、亡くなる直前に贈与して相続税逃れをすることを防ぐため、亡くなる直前3年以内の贈与についてはさかのぼって相続財産に加算して、相続税の課税対象にするという制度があります。この制度は、相続財産に戻して合算することから「持ち戻し」とも呼ばれています。

 今回の改正では、その加算期間(持ち戻し期間)が3年から7年に延長されました。ただし、いきなり7年に延期されるのではなく、やや複雑な経過措置が設けられました。

(2)相続時精算課税の見直し

 贈与に対する課税の方法には、暦年課税のほかに「相続時精算課税」があり、どちらかの制度に従うことになります。相続時精算課税は税務署に申請することで選択できる課税方法です。特に申請しなければ、暦年課税が用いられます。

 相続時精算課税は、累積2500万円までの贈与ならば贈与税がかかりません。その代わり、贈与した人が亡くなったときには生前の贈与額を相続財産に合算しなければなりません。いわば、相続財産の前渡しと考えるといいでしょう。いつ贈与しても相続税の税額は変わらないため、前項で説明した、「資産移転の時期の選択に中立的な税制」といえます。

 ただし、これまでは相続時精算課税は扱いにくかったために、必ずしも普及しているとはいえませんでした。そこで、財務省は相続時精算課税を選択してもらうことを目的として、使い勝手を向上させるための見直しを行いました。

(3)教育、結婚・子育て資金の贈与の見直し

 教育資金の贈与、結婚・子育て資金の贈与に対しては、従来から非課税措置がありましたが、どちらも利用者が少なくなって廃止されるだろうと予想されていました。しかし、内容の見直しを行ったうえで、教育資金の贈与非課税措置は2026年3年末まで、結婚・子育て資金の贈与非課税措置は2025年3月末まで、それぞれ適用期限を延長することになりました。

以前から注目を集めていた「暦年贈与」改正の行方

 3つの改正ポイントのうち、特に注目されるのは、(1)の「生前贈与の相続財産加算期間が3年から7年に延長」されたことです。

 これがなぜ注目されるかというと、相続税の節税に広く活用されている「暦年贈与」が利用しにくくなるためです。

 ご存じのように、相続税というのは亡くなった方の財産を、遺された配偶者や子どもなどが相続するときにかかる税金のことです。当然のことながら残した財産が多ければ多いほど、あるいは相続した資産の価値が高ければ高いほど、たくさんの税金を払うのが原則です。