郊外の「使い道がない土地」が長期安定の収益源に、クリニック誘致が地主を救う理由写真はイメージです Photo:PIXTA

昨今、人口減少や少子高齢化、都市部への人口集中などにより郊外の土地運用が深刻な問題になっている。そんななか、郊外の土地に医療機関を誘致することがメリットの多い方法だとしてにわかに注目を浴びている。本稿は、岡田衛『郊外の地主を救う クリニック土地活用』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

使い道に困る土地に
病院を誘致して安定収益

 私は愛知県でクリニックなどの医療建築に特化した建設会社を経営しています。また建設事業だけでなく郊外の土地を所有する地主と、開業を考えている医師との土地の仲介事業も行っています。郊外は都心に比べて競合相手が少なく、経営コストも削減できるので、開業を目指す医師にとって需要が高いためです。

 土地活用に困る地主にとっては、土地活用の本質はより多くの収益を上げることとは限りません。特に郊外の地主にとっては、人に安定的に貸すことで土地の管理の手間を省いたり、運営の負担が大きい農地の維持から解放されたり、子や孫に望まない用途の土地の管理を任せることを避けたいという意味もあります。そのため、収益面ばかりでなく土地のもつ可能性を冷静に判断し、その用途の選択肢をできる限り広げることにこそ本質があるといえます。

 農地のほかに使い道のない土地や商業施設やアパート・駐車場としては収益性が低い土地にクリニックを誘致することで、安定した収益を得る事例は数多くあります。どの事例も郊外の土地であるために、土地から得る収入自体はそこまで多くはありませんが、初期投資の元本割れのリスクなく、長期的に安定した収益がもたらされることで地主本人だけでなく親族にも喜ばれていることが特徴です。

 クリニックの誘致はあくまでその用途の一つに過ぎません。しかし、郊外の土地の特性である広い敷地と開発余地のある周辺環境に非常に適した方法だといえるのです。その成果について、事例を用いて説明します。

事例1
息子の説得でクリニック誘致を決めたAさん

 Aさんは市街化区域に立地する土地で畑を営んでいた80代の男性です。しかし、私たちが訪問した段階ではすでに寝たきりになり、畑は妻と息子に任せている状態でした。

 畑は生産緑地の指定を受けていませんでしたが、Aさんの保有する土地は宅地並みの課税がなされる三大都市圏の特定市の市街化区域ではなかったため、農地に準じた課税がなされており、年に数万円の固定資産税を納めるのみで土地を維持することができていました。

 畑から得られる収穫物については、本格的な農業をしているわけではなかったため、季節ごとの収穫物を自家消費するか、親戚に分け与えていました。Aさんは健全な頃は妻とともに畑作に精を出しており、畑が生きがいとなっていたそうです。

 畑地は約250坪の広さがありました。少々クリニック開業には狭いものの、市街化区域に立地するAさん所有の畑の場所は宅地からほど近く、駐車場が少々狭くても自転車などの来院を含めると十分集客を得られそうでした。