56歳キングカズ、出場・ゴール激減でも「現役続行」のワケ…全面支援するキーマンとは?Photo:Gualter Fatia/gettyimages

56歳のプロサッカー選手、FW三浦知良の新たな戦いが間もなく始まる。今年1月に横浜FCから期限付き移籍した、ポルトガル2部オリベイレンセとの契約をさらに1年間延長。8月中旬の新シーズン開幕を心待ちにしている。50歳を迎えてからはゴールもプレー時間も激減しているキングカズは、結果が求められるプロの世界でなぜ現役を続けられるのか。その背景には、生涯現役を望むカズを全面的に支援してきたとされる「キーマン」の存在があった。(ノンフィクションライター 藤江直人)

キングカズ自身も衰えを自覚
「正直、大変になってきている」

 年齢を重ねるたびに、人間の体は確実に衰えていく。絶対に避けられない運命を、56歳のプロサッカー選手、三浦知良ももちろん理解している。実際、カズ自身もこう語っている。

「体力面に関しては、例えば(相手に)走り勝てるかと言えば、正直、大変になってきているよね」

 衰えに言及したのは年齢の十の位が「5」になり、以前にも増して注目を集めていた2017年の開幕直後。しかし、カズはその後も横浜FCでJ2やJ1の最年長出場記録を更新し続け、昨シーズンは4部リーグにあたるJFLの鈴鹿ポイントゲッターズで18試合に出場して2ゴールを挙げた。

 年が明けてからはポルトガル2部リーグのオリベイレンセへ移籍。後半終了間際からピッチに立ち、新天地でのデビューを果たした4月22日のアカデミコ・デ・ヴィセウ戦は、ポルトガルサッカー界における史上最年長出場記録を更新したメモリアルゲームとしても脚光を浴びた。

 しかし、オリベイレンセでの出場は3試合にとどまった。最も長くプレーしたのが、後半18分から投入された5月28日のレイションイスとの最終節。このときはゴールに関与していないカズがマン・オブ・ザ・マッチに選出され、相手チームの監督が異議を唱える事態も招いている。

 シーズンを終えたカズのもとへは、いくつかのオファーが届いていると報じられた。去就が注目されていたなかで、11日にオリベイレンセがクラブ公式ツイッター(@oliveirense_sad)へ「カズ・ミウラはわれわれとともにプレーを続ける」と投稿。カズも15日に再びポルトガルへ渡った。

 そのカズのプロキャリアを巡り、評論家のセルジオ越後氏が厳しく指摘したのは21年の年末だった。

「ここ何年も試合にほとんど出ていないし、得点も取っていない。他のチームは厳しいのに、なぜ横浜FCはあれだけカズをかばうのか。プロリーグはアマチュアとは違う。どんな選手であれ、試合に出らなければ戦力外になる。カズであれ誰であれ、貢献しない選手が去っていかなければJリーグは沈んでいく。貢献って何だろうということで声を上げました」

 セルジオ氏は、カズを真のプロと認めた上であえて苦言を呈してきた。ただ、それが行き過ぎてしまうときがあり、実はこの直前に自身の公式YouTubeチャンネルで「カズがCMに出演すると所属クラブにお金が落ちる」といった誤解を招く発言をし、重大な事実誤認があるとして横浜FCに抗議されていた。セルジオ氏はこれを受けて「不適切な発言がありました」とおわびする動画を公開したが、そのなかでひとしきり謝罪した後で、上記の疑問を投げかけたのだ。謝罪動画のなかで批判を展開するほど訴えたい件だったのだろう。

 そして、得点数やプレー時間に関しては、セルジオ氏の指摘は的を射ている。