米国は国益に基づき
韓国を重視

 米国は文在寅政権時代の韓国の背信行為を忘れてはいないであろう。しかも、現在の韓国の国会議席300中170近くを野党である「共に民主党」が占めていることを危険視しているであろう。

 しかし、現在米中対立が深まる中で、再び文在寅大統領のような政権が誕生しないよう、バイデン大統領は中国よりも米国を重視する尹錫悦大統領を支えていくことを重視しているのであろう。それが尹錫悦大統領を歓迎し、北朝鮮の暴挙や中国の横暴に共に対峙(たいじ)する姿勢を強調するもとになっていると考える。

 韓国における次の総選挙と大統領選挙で韓国国民が保革どちらを選択するか、不透明なのは事実である。しかし、韓国国民が中国を嫌っていること、北朝鮮の脅威を感じていることは最近の世論調査で次々に明らかになっている。

さまよえる韓国人『さまよえる韓国人』(WAC)
政権交代後も『さまよえる韓国人』は続くと解説した話題本。発売中

 そこで米国は、北朝鮮に対する防衛に協力するためには韓国の対応が重要であること、米中間で中国寄りの姿勢は背信行為であることを示し、こうした米国の強い姿勢を韓国国民に突き付けることが、保守への支持を増やすことになると考えているのではないか。

 また、再び文在寅政権のような政権が誕生する場合には米韓同盟も無事ではないことを何らかの形で知らせようとする可能性もある。

 いずれにせよ、米国が文在寅政権を許したとは思わないが、国益に基づき、尹錫悦政権の韓国とは親密な関係を築き上げていこうとしていることは明らかであろう。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)