回収しなかったとしても相続税の計算に入れるべきか否かという論点があります。
相続が発生した時点で、回収できるのに回収せずに諦めるなら、債権としての価値があるので相続税の計算に入れなければなりません。
しかし、相続が発生する前から回収は不可能であったとすると、回収可能性のない債権は価値がゼロ円なので、相続税の計算に入れる必要はありません。
従って、亡くなった時点で回収可能性があったのか否かという点を、私たち税理士はよく考え、ロジックを組み立てて申告の内容を考えていきます。
この書類があれば、大丈夫!
誰かにお金を貸していて、もう返ってくる見込みがないということであれば、「この人にお金を貸したけれども、もう回収は不可能です。この債権を放棄します」という旨を書面で残しておきましょう。債務免除の通知を出していれば、貸付金はないものとして扱って問題ありません。
ただ、税理士によって貸付金の評価はスタンスが割れます。「人に貸しているお金があるならそれは貸付金として相続税の計算に入れるべきだ」と考える税理士のほうが多いかもしれません。
私は回収可能性について税務調査で戦ったことが何回かあるので、回収可能性がないなら評価する必要はないと判断し、ゼロ円にする方向で進めます。
相続税の申告書を提出してから税務調査が入るまで、1年から2年のタイムラグがあります。その間に、実際に回収できているかどうかが最も重要な判断要素になります。
つまり「残された手掛かりを使ってさまざまなことをしたけれども無理だった」となると、それは回収可能性が低い債権であると主張しやすくなります。しかし、調査が入るまでに少しでも回収できていれば、回収可能性があったと判断されるので、その点には注意してください。
(本原稿は橘慶太著『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋・追加加筆したものです)