初対面であっても、相手の様子をきちんと観察する習慣を身につければ、微妙な違和感はすぐに察知できます。こうした問いかけをすれば、状況の変化に応じて素早く対応することが可能になります。

 極端なケースでいえば、「予算がなくなったから、御社の提案にはお応えできない」という相手の反応を最初に引き出すことができれば、無駄なプレゼンをすることなく、新たな方向性に沿った話し合いを素早く始めることができます。わずか数分の確認作業によって、その後の結果が大きく違ってくるのです。

雑談で相手企業の「意思決定」の流れを確認する

 これは意外な盲点になっていることですが、相手企業がどのような流れで判断を下して、誰が最終的な意思決定者なのかを確認しておくことも雑談の大切な目的です。

 相手がどんなプロセスを経て決定するのか、誰が予算を握っているかを知らないまま、ただ応対してくれただけの相手に全力投球で売り込んでも意味がありません。担当者に決定権があるのか、決定権がないならば誰にプレゼンすればいいのか、早い段階で知っておく必要があります。

 日本のビジネスマンは、相手に遠慮しているのか、気を遣っているのか、誠意を伝えることばかりに注力して、決定までの流れを曖昧にしたまま商談を進めているケースが少なくないようです。

 世界のビジネスマンは、雑談の際にストレートに質問して、決定までのプロセスを把握してから本題に入っています。

 そのあたりを不透明にしておくのが日本式の商談なのかもしれませんが、それとなく探り出すような工夫を続けることが大切です。

 少なくとも、「何が意思決定の決め手になるのか?」とか「意思決定の障害になる要因は何か?」くらいは雑談で聞き出しておく必要があります。

 ビジネスの相手がグローバル企業や外資系企業であれば、「どなたが意思決定者ですか?」とストレートに聞いても失礼には当たりません。相手も当然のこととして答えてくれますし、こちらから質問しなくても相手が先に伝えてくれることもあります。

雑談を通じて「ライフタイムバリュー」を高める

 ビジネスの雑談には、もうひとつ大きな目的があります。顧客の「ライフタイムバリュー」(顧客生涯価値)を高めることです。

 ライフタイムバリューとは、取引を開始してから終了するまでの間に、顧客がどれだけの利益をもたらしてくれるのか……という価値基準です。