恋愛も専守防衛、ピュアな防大生

 2学年になると外泊や飲酒が可能になるため、一部の学生は誰かが設定した合コンなどに参加するようになります。ただ、防大生は地方の優等生といった感じの奥手の人も多いため、「そもそも恋愛に興味がない」というタイプのほうが多いです。

 一般大学であれば、「新歓コンパ」などの浮ついたパーティーを行うことで、恋愛に興味がなかった人も恋愛に発展することがあると思います。ただ、防大では自然恋愛に発展することは皆無であり、1学年のストイックな生活を通して「修行僧」のようになってしまうのです。

 さらに、専守防衛の精神を学んでいる防大生は、国防だけではなく恋愛も専守防衛のため、「好きだ」の3文字を言うことができません。

 そうして彼らは男だらけの青春に満足し、わざわざ恋人を作る必要はないと考え、休日もグラウンドでラグビーボールを追いかけます。休日は、同期とともにしゃぶしゃぶ食べ放題で恐ろしいほどの量の肉を食べることで、満足してしまうのです。

 また、普段は「日本の国防を〜」や「防大生としてあるべき姿に〜」と熱く語っていても、恋愛のことになると急にピュアになり、「どうしたらいいか分からない」とかわいい面もあります。よくも悪くも昭和の男性に近いところがありますね(彼らは大抵、長渕剛が好きです)。

 そんな防大生ですが、4学年になると状況は一変します。夏に部活を引退し、休日に自由な時間も増えるようになると、少しは今時の若者らしくなります。

 さらに、防大は「卒業ダンスパーティー」という伝統があります。これは「士官としての相応しい立ち居振る舞い」を学ぶために、伝統的に行われている行事であり、新高輪プリンスホテルの「飛天の間」にて異性と卒業式で踊る必要があります(元陸軍参謀の辻政信が「女性と踊るなんてけしからん」と激怒した逸話さえあります)。

 もちろん、卒業ダンスパーティーへの参加は任意ですし、辞退することさえできます。しかし、防大において「卒ダン辞退」というのは「負け犬」の象徴であり、恋人(※)と踊ることは「誉れ」とされています。ここで、防大4学年はパートナーを追い求めて奮闘します。

※パートナーがいない学生は、女子大のダンスサークルの女性と踊れる。ただ、その子たちとは「恋愛にはならない」というジンクスがある。