厚生労働省から7月28日付で発出された「GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」厚生労働省から7月28日付で発出された「GLP-1受容体作動薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」

この4月に登場した糖尿病治療の新薬「マンジャロ」による20%の体重減少効果が思わぬ波紋を広げている。今年に入り糖尿病薬の出荷調整が相次いでいるのだ。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

出荷調整で本来の糖尿病の診療に支障も

 2型糖尿病治療薬の一種「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬」の出荷調整ドミノが止まらない。3月には、米イーライリリーの「トルリシティ」(一般名・デュラグルチド)、7月には同社の「マンジャロ」(一般名・チルゼパチド)の高用量4規格(7.5ミリグラム、10ミリグラム、12.5ミリグラム、15ミリグラム)が限定出荷になった。

 さらに8月上旬には、デンマーク・ノボノルディスクの「オゼンピック」(一般名・セマグルチド)2ミリグラム、そしてマンジャロの低用量2規格(2.5ミリグラムと5ミリグラム)までも限定出荷になった。

 マンジャロに至っては、4月の発売からわずか4カ月足らずで全6規格全てで出荷調整がかかる異常事態。第III相試験(最終段階の臨床試験)で既存薬を凌駕する20%以上の痩身効果を示したことで、欧米と共に日本でも大型化が見込まれていたが、イーライリリーとしては出だしで大きくつまずいてしまった。

 相次ぐ出荷調整で「メーカーからマンジャロ、オゼンピックの新規処方はしないよう要請があり、診療に支障が出ている」と、糖尿病専門医で豊洲内科・糖尿病/形成・美容外科クリニック院長の澤口達也医師は嘆く。

 現状、これまでマンジャロやオゼンピックを使用してきた患者には継続処方できているが、澤口医師のクリニックでは「マンジャロについては、来月以降入荷されるかどうか分からない状況」という。