とくに、足腰が弱っている人は、室内履きも、スリッパタイプではなく、「かかとのある靴」を履いたほうが歩きやすいはずです。

 また、外履きも室内履きも、開口部分が大きく、足を入れやすいものを選ぶといいでしょう。ファスナー付きで、簡単に脱ぎ履きできる靴もおすすめです。

 そして、とにかく「滑りにくい靴」を選びましょう。70歳を超えたら、たとえ孫の結婚式でも、底がつるつるの革靴を履かないことです。

ウォーキングは地上よりも水中で
体温調節機能の低下防止にもなる

 吉永小百合さん主演の『北の桜守』という映画があります。その作品は「認知症」をテーマのひとつとしていることから、私が「医療監修」を務めました。

 そのご縁で、吉永さんとお話しする機会を得たのですが、やはり超絶、若々しい方でした。吉永さんは1945年生まれなので、今は70代後半、「80歳の壁」を目の前にしているのですが、少なくとも数千人の高齢女性を診てきた私から見ても、最も若々しい70代女性の1人でした。

 吉永さんは、若い頃から、スポーツジムに通い、おもにプールで泳いできたと聞いています。バタフライもマスターされたそうです。私は、吉永さんが「水の中」に長くいたことも、若々しさの秘訣ではないかと思うのです。

 今、スポーツジムの利用者データをみると、最もよく利用している層は60代、次に70代が続きます。スポーツジムは、今や高齢者向けの施設といってもいいのです。

 今からジムに通われる人は、吉永さんのように、プールのあるジムを選ぶといいでしょう。今は、プールのないジムに通われている人も、可能であればプール付きの施設に移ることをおすすめします。

 というと、「生来の金づちで……」とおっしゃる方もいるでしょう。しかし、私がプールのあるジムをおすすめするのは、「泳ぐ」ためではありません。水の中を「歩く」ためです。

書影『80歳の壁[実践編]』(幻冬舎)『80歳の壁[実践篇]』(幻冬舎)
和田秀樹 著

「水中ウォーキング」は、地上を歩く以上に、すばらしい運動です。まず、水中では、浮力が働くため、自らの体重による負荷が体にかかりません。膝や腰を痛めることなく、安全に運動できるのです。高齢者には、ランニングマシンの上を歩くよりも、水中ウォーキングのほうが、はるかにおすすめです。

 加えて、水の中にいると、水の冷たさが刺激となって、体は体温を維持しようとします。すると、体温調節機能の衰えを防げるうえ、新陳代謝がよくなります。

 さらに、水中にいると、それだけでリラックスできるという効果もあります。

 今は、いろいろなジムが、無料の体験チケットを配っています。何事も「物は試し」です。「お試し券」を利用して、まずは水を切って「歩く」快さを味わってください。