1 「歩くスピード」にこだわらない

 若い人向けのウォーキングの本には、「時速6キロ以上で歩く」などと書いてあるものですが、高齢者は速度にはこだわらないことです。年をとると、筋肉がすぐに疲労して、乳酸がたまってしまいます。自分の体力、体調に合わせて、マイペースで歩くことが大切です。

 なお、老年医学で、フレイルやサルコペニアと判定する基準は、おおむね「歩行速度が秒速1メートル未満(時速3.6キロ未満)」です。ただ、それ以下のスピードでも、歩かないよりは、よほどマシです。

2 歩きだす前に、最低限、この「2カ所」はストレッチする

 歩く前に、筋肉をよくほぐしましょう。全身のストレッチをするのが望ましいのですが、少なくとも、ふくらはぎと太股の裏だけは、しっかりストレッチしましょう。この2カ所は、高齢者が歩き続けるための生命線。痛めると、あとが厄介です。

3 70代までは「いろいろな道」、80代は「決まった道」を歩く

 歩くルートは、おおむね70代までは、「いろいろな道」を歩くといいでしょう。歩くと、車や自転車に乗っているときには、気づかないことにも目が向きます。そうした発見が脳を刺激してくれます。

 一方、八十路に差しかかったら、毎日同じ道、少なくとも歩き慣れた道を歩いたほうがいいでしょう。知らない道を歩くと、転倒したり、迷子になるリスクが高まるからです。

4 雨の日は「家の中」で歩く

 高齢者が雨の日、「危険」をおかしてまで、滑りやすい路上を歩く必要はありません。家の中で「歩くふり」をするだけでも、けっこうな運動量になります。

 その方法は簡単で、足を前後に開いて、腕を「イチ、ニ、イチ、ニ」と前後に振るだけでOKです。それだけで、体がポカポカ温まり、また肩甲骨の周辺がほぐれて肩こりが楽になるはずです。

「いい靴を買う」は「いい足を買う」こと
爪先の上がった滑りにくい靴を選ぼう

 高齢者にとって、「歩きやすい靴」を履くことは、若い頃以上に重要です。いい「靴」を探すことは、いい「足」を探すことといってもいいでしょう。そこで、「いい靴=歩きやすく、かつ安全な靴」を買うコツをいくつか紹介しておきます。

 まずは、「爪先がいくぶん上がっている靴」をおすすめします。つまずきにくくなるうえ、歩きだしも楽だからです。

 とりわけ、足が上がりにくくなっている人は、室内履きも、爪先が上がっている「ケアシューズ」を使うといいでしょう。室内履き用のスリッパは脱げやすく、またつまずきやいので、高齢になると、けっこう危険なのです。