「病気になりたくない」というのは、すべての人に共通する願いです。しかし、病気にならないためにどんな行動をとるべきなのかは「よくわからない…」という方が多いのではないでしょうか。
そんななか、「科学的に正しい」健康習慣の身につけ方を明かした、公衆衛生学者・林英恵さんの最新刊『健康になる技術 大全』が話題を呼んでいます。最先端のエビデンスをベースにした「健康に長生きする方法」を伝授する本書に、読者からは「健康関連本としてはブッチギリのベスト」「一家に1冊置いておくべき」と激推しの声が続々と届いています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、睡眠と健康の相関性についてご紹介します 。
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)
睡眠不足は心臓病・脳卒中のリスクにつながる
日本は、国際的にも睡眠時間が短い国の1つです。OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本人の睡眠時間は7時間22分で加盟30ヶ国中、最下位でした(*1)。
睡眠の専門家は、「寝ることは決して無駄な時間ではなく、食事や運動と同じくらい健康において重要なものである」と説いています(*2)。睡眠に関する厚生労働省の指針では、年齢や季節でも変わるために一概に言うことは難しいものの、必要な睡眠時間は約6時間から8時間未満だと述べています(*3)。
睡眠は、体の健康にとって非常に重要です(*4)。寝ることで、起きている間に損なわれたものを修復、回復させる機能があるといわれています。具体的には、寝ることで、心臓や血管、筋肉、細胞などの機能が修復されます。睡眠不足は、心臓疾患、腎臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中、体重増加、肥満のリスクにつながる可能性があると報告されています(*5)。
ストレスホルモンに影響を与えるためストレスをより感じやすくなったり、免疫機能にも影響を与えたりもします(*5)。思春期や成長期においては、心身の発達や問題行動との関連が報告されています(*5)。
「慢性的な睡眠不足」は寿命を縮める
そして、慢性的な睡眠不足は、寿命をも短くしてしまう可能性があるようです。睡眠時間は短すぎても長すぎても死亡率の増加との関連が見られました(*6-8)。日本人を対象とした研究でも、睡眠時間が長いと、男女ともに全体的な死亡リスクが高くなることが報告されました(*9)。
具体的には、睡眠時間が7時間のグループに比べて、睡眠時間が10時間以上は死亡リスクが男性で1.8倍、女性で1.7倍となりました。どうしてこのように、睡眠時間が長いと死亡リスクが高いという結果になるのかメカニズムははっきりわかっていません。
この研究では、死亡になるような病気の可能性で睡眠時間が長くなることを除外する分析を行っていますが、睡眠時間が長い人は病気を持っている人が多く、より死亡に結びつきやすいことも可能性としてありえます。
睡眠不足を長く続けると病気になりそうだ、というのは想像できるかもしれないのですが、実は、たった1日でも健康に直結するような結果も出ています。例えば、睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりした場合、次の日の血圧が上がる傾向が見られました(*10)。1日の睡眠不足でも侮れないのです(*11,12)。
(本稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』より一部を抜粋・編集したものです)