互いの価値観を確認できる作品かもしれない

 ここからは、少しネタバレとなる。

 SNS上ではポリコレ嫌いな層からの批判や、先述したような「失望」もあるものの、風刺を存分に楽しんだというコメントや、中には一緒に見に行った男性が感動して泣いていたという感想も見られた。

 ラストの受け止め方はさまざまだろうが、作品の後半で描かれているのは、資産などの持ち物や、人からの評価によって存在価値が決まるという思い込みからフリーになろうというメッセージだと筆者は受け取った。

 また、ある人物が口にする「自己認識の欠如が争いの原因」というセリフは、現代社会において非常に示唆的だと感じられた。誰かの目に映った姿で自分を確認し続ける限り、安心は訪れない。

 アメリカでは男女のカップルで見に行って男性が理解できずに別れた……という話もあるようだが、お互いの価値観を深く知り議論を交わすためにも、ぜひ鑑賞をおすすめしたい。