原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?Photo:The Washington Post/gettyimages

アメリカで公開中の映画『オッペンハイマー』と『バービー』の上映開始日が同じだったことから「バーベンハイマー(Barbenheimer)」というネットミーム(※)が生まれた。これをめぐって、日本でひと騒動が巻き起こっている。(フリーライター 武藤弘樹)

 ※SNSなどで人々が模倣し拡散される、いわゆる「ネタ」要素の強い画像や文章のこと。

「バーベンハイマー」誕生から映画『バービー』炎上
一連の流れおさらい

「バーベンハイマー」にまつわる騒動を、筆者は日本人として嫌な気分で見ていたが、ひょっとしたら必要以上に不快に感じられている部分があるかもしれないと気づいた。

「バーベンハイマー」騒動に感じた嫌な気持ちを、わずかでも軽減させられるかもしれない可能性が本稿にはあるので、(風呂敷を広げておきながら、回収できなかったらとても申し訳ないが)心の健康を取り戻したい方には、ぜひご一読願いたい。筆者も必死に脳を稼働させて書き進めるつもりである。
 
 まず、一連の出来事は次のとおりである。
 
「原爆の父」として知られるロバート・オッペンハイマーをモデルにした伝記映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』(日本公開は未定)と、おもちゃの人形で有名なバービーが主人公となった実写コメディ映画『バービー』(8月11日に日本公開予定)が、米国で7月21日に同時公開された。
 
 ともに大ヒットしていて、その盛り上げといった意味合いで、バービーとオッペンハイマーをかけ合わせた「バーベンハイマー(Barbenheimer)」という造語が誕生した。
 
 さらに、バービーときのこ雲をかけ合わせる類の画像が一般ユーザーらによっていくつも作成されてX(Twitter)に投稿された。これに映画『バービー』の米国公式アカウントが好意的なリプライをつけて反応した。
 
 その様子を見ていた日本人ユーザーから批判が殺到して、映画『バービー』の日本公式アカウントが、配給元の子会社であるワーナー ブラザース ジャパン(以下、ワーナー日本法人)の声明として、7月31日に次のようなメッセージを発信した。

・「バーベンハイマー」は公式の活動でない。
・米国本社の公式アカウントの配慮にかけた反応は極めて遺憾。本社にしかるべき対応を求めている。
・「不快な思いをされた方々には、お詫びを申し上げます」

 その後、翌8月1日(現地時間では7月31日夜)、本社ワーナー・ブラザースは各メディアに寄せる形で遺憾と謝罪を表明する声明を発表した。炎上の発端となったTwitter上の一連の投稿は削除されたが、米国側の映画『バービー』Twitter公式アカウントでは発信はなく(8月3日時点)、やや見つかりにくい情報となっている。
 
 8月2日、映画『バービー』のジャパンプレミアが開催され、監督とプロデューサーが来日、主演の吹き替えを担当した女優の高畑充希も出席した。高畑は出席前に、自身のInstagramでバーベンハイマーに関する複雑な思いを誠実な姿勢と言葉で語ったが、ジャパンプレミア本番において監督やプロデューサーがバーベンハイマーに触れることはなかった。これを受けて日本では、落胆や幻滅の声が広がっている。
 
 ここまでが今である。