社会には性犯罪者や予備軍が溶け込んでいる

 筆者は女性を殺した後にいわゆる「屍姦」をしたような異常な犯人や、下校中の少女を草むらに連れ込んでわいせつ行為をした犯人、少女を誘拐して9年2カ月間、自分の部屋に監禁した犯人など、さまざまな性犯罪者に直に話を聞いたことがある。彼らの多くは自分がいかに不幸だとか、世の中から迫害を受けているというような話は一生懸命熱弁を振るうが、「被害者」の心情に寄り添うような話はほとんどしない。

 罪悪感から避けているとかではなく、あくまで自分の欲望が抑えきれなかった対象というだけで、その人が何を考えて、どんな人生を歩んでいたかなどに興味がないのだ。相手を「人」として見てないので、卑劣な性犯罪ができるのだろう、と妙に納得をした覚えがある。

 そして、なかなか受け入れ難い話だが、こういう性犯罪者やその予備軍が我々の社会の中には一定数いる。彼らは普段は社会に溶け込んで、欲望を抑えこんで暮らしている。が、何かのきっけで自制がきかなくなって、逆らわない者、バレる恐れがない者を毒牙にかける。

 先日も、大手中学受験塾「四谷大塚」の講師が、教え子の女子児童のわいせつな写真を撮ったり、小児性愛仲間に住所や名前などの情報を流して逮捕されたが、性犯罪をしやすい仕事につく小児性愛者もいる。また、作曲家の服部良一氏の息子が告発したように、ジャニー喜多川氏も10代から小学生の男子児童に繰り返し「いたずら」をしていた。その後、ジャニー氏は少年野球チームをつくって、アイドルビジネスをスタートする。先の塾講師と同じく、自分の欲望を発散するため、これらの仕事を選んだ可能性は高いだろう。

 このように性犯罪者と予備軍が、普通の顔をして息を潜めているという現実を踏まえれば、熱狂した人々が薄着で密集する「音楽フェス」が「欲望の発散場所」になってしまうのは自明の理だろう。

 実際、『夏フェスで痴漢から「薄着女性」をどう守る?』という記事からもわかるように、もう何年も前からフェスでの性犯罪は問題になっている。

 今年2月には、フェスに参加した女性客がSNSに「ちかんされて服穴空いた」「ブラ外されたし胸揉まれた」などのコメントと共に、破れた服の写真をアップして問題になった。

 残念ながら、満員電車で痴漢をする日本人が一定数いるように、音楽フェスでも酔った勢いや、自分の欲望が抑えきれないことで、目の前にいる女性にわいせつ行為をする日本人が一定数いるのだ。

 だから、この犯罪自体を深く掘り下げても何もいいことはない。「やはりこういう場では性犯罪が起きるね、これからどうやって防ごうか」という建設的な話をしていくべきだ。

 しかし、「韓国」というパワーワードが出てきてしまったことで、ナショナリズムが暴走して不毛な論争が始まってしまった。とにかく「日本の未来ある若者が性犯罪者の汚名を着せられた」という結論に持っていくため、欲望を抑えきれず酒でムラムラした加害をどうにか「被害者」として擁護をする、というかなり強引なストーリーがゴリ押しされることになってしまったのだ。