露出のせいとすればするほど、自分たちをおとしめる皮肉

 こういう強引なストーリーを押し通すと、必ずブーメランになって日本のイメージを低下させる恐れがある、というのはこれまで歴史が証明している。つまり、愛国心あふれる人たちがDJ SODAさんを叩けば叩くほど、それが日本をおとしめることになるという、なんとも皮肉な現象が起きるということだ。

「胸を触られるのは肌を露出した格好をしているからだ」という主張は、「日本人の男は目の前の肌を露出した女がいると音楽フェスだろうがなんだろうが自制がきかない」と言っているようなものだ。

 つまり、「被害者が悪い」という無理筋の主張をゴリ押ししていることがかえって、「日本では露出した服をきた女性は性犯罪にあっても仕方がないという考え方がある」ということを、世界に発信するという逆PRになっているのだ。

 しかも今、日本人女性が海外で性犯罪にあうというケースも増えている、と外務省が注意喚起をしている。一部の人々が主張する「胸を触られるのは肌を露出させて、観客席に近づいた女性が悪い」という話が日本の常識として広まれば、性犯罪被害にあった女性たちに「どうせ海外で開放感から肌の露出した服を着ていたんだろ」「外国人に甘い言葉でささやかれて危ない場所についていったんだろ」などと心ないセカンドレイプ被害も誘発されてしまう。

 奇しくも、「人類史上最悪の性犯罪」と言われるジャニー喜多川氏の70年に及ぶわいせつ事件も世界にバレた。Netflixでは、欧米女性が性的暴行・殺害された「ルーシー・ブラックマン殺害事件」のドキュメンタリーが海外でも注目を集めている。

 そんなご時世で、性犯罪被害者の韓国出身女性を「当たり屋」「自作自演」などと叩けば世界にどんな印象を与えるか。

 本当に日本のことを愛しているのなら、ちょっと冷静になって、そんな誹謗中傷が「国益」になるかを真剣に考えてみた方がいい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)