ジャニーズ事務所ジャニーズ事務所 Photo:PIXTA

国連「メディアが加担」と指摘、スルーするマスコミ

「数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになったほか、日本のメディア企業は数十年にわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」

 8月4日、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家2人は、日本のメディア企業の前でそのようにぶちまけた。

「人類史上最悪の性虐待事件」(元ジャニーズJr. 石丸志門氏の言葉)と呼ばれる、ジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性加害が、ここまで表沙汰にならなかったのは、テレビ局、新聞社、レコード会社、芸能事務所、広告代理店など、あらゆるメディア企業が「共犯」だったと指摘したのである。

 ついに国連まで動いたとなると、「これでマスコミとジャニーズ事務所の腐敗した構造が明らかになるぞ。ジュリー氏も“知らなかった”で逃げきれない」と淡い期待を抱く方も多いだろう。

 だが、残念ながら、そういう核心的な話になる可能性は低い。

 確かにここまで大事になれば、「ジャニーズ」という屋号を変えざるを得ないだろう。また、被害者に対して慰謝料など具体的な条件を提示していかなければいけないはずだ。

 ただ、被害者たちが主張している、ジャニーズ事務所の組織的隠蔽やジャニー氏の犯罪の容認、アシストしていたエンターテイメント業界の悪習、メディア企業との癒着関係という深い話はスルーされ、トーンダウンしていくはずだ。

「国連が問題視して世界が注目しているのにそんなワケないだろ」とあきれる方も多いだろうが、実は日本では“国連が問題視したことは国民的議論が盛り上がらない”と相場が決まっているのだ。

 なぜかというと、メディア企業が積極的に取り上げないからだ。今回のように会見を開けばその日くらいはトップニュースで扱う。しかし、それだけだ。

 国連などから指摘を受けて、マスコミがキャンペーンを始めたとか、調査報道をするということはほとんどない。ひどい場合、「こんなもんは被害者ヅラする連中が国連に働きかけて騒いでいるだけで、報道する価値などない」という感じで、完全無視をする。

 その代表が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の拉致監禁問題だ。