すでに制約が顕在化しているパターン

 現在、すでに子育て、介護、その他家庭の制約によって、悩みを抱えているケースもある(ここでは都市部に住む、子育て共働き世帯を想定して論じるが、ほかの問題にも通じる内容だ)。まず、前提として、この時代に女性だから、男性だからという前提を置くこと自体がやや固定観念的ともいえる。だが、男性の育休取得も少しずつ一般化しているものの、現実的に「出産や育休をどう捉えてキャリアを考えたらよいのか」という質問をもらうのは女性からが多い。

 出産後も、キャリアとプライベートを両立させた毎日を送っている方もいる。だが、私が、社内外で「女性活躍のロールモデル」として取り上げられている方から、表向きの内容とはまったく異なる実態を直接聞いたのは1度や2度ではない。

 どういうことかというと、まず、子どもが生まれ、どうしても働き方や時間の面で制約が出るようになった。その状況だと、過去自分が培ったスキルに頼って、効率的に仕事をこなし成果を出すスタイルにならざるをえず、結果的に若手のときほどの成長は感じていない。組織にも向き合い切れず、内心では危機感を抱いているのだという。

 周りに立派に仕事とプライベートを両立している(ように見える)方がいると、ついつい「なぜ自分はできないんだろう」と自己否定に走りがちだが、その必要はない。

外部の力を借りる

 そのうえで、どうするかだ。「もう無理だ」と諦めてしまいたくなる方の気持ちもよくわかる。ただ、その制約が、「本当に解消不可能な制約なのか」と1度考え直してみるのも、悪くはない。

 各種のベビーシッターによるサポートや、自治体のファミリーサポートなどの保育支援など、時間的・物理的制約を解消してくれる存在は、官民問わず多数ある。金銭的負担が一定生じるのも事実だが、キャリアづくりの観点から言えば、一時的な出費を伴ってでも、成長機会を掴む(そこまでいかずとも、キャリアへの制約が小さくなる)ことを優先したほうが、将来的なBS(貸借対照表)はよりよいものになる、とは言えるだろう。

「家に人を入れるのは嫌」「外部の人に頼りづらい」など価値観のレベルで抵抗感を持つ方も少なくないが、試しに何回かお願いしてみると、「なんで今までお願いしなかったんだろう」と考えが変わることも意外とあったりする。あまり食わず嫌いすることなく、できる選択肢はトライしてみて、そのうえで判断してみる、という姿勢から始めてみてもよいのではないだろうか(と、わざわざ書くほどに「外部の力を借りる」を真剣に検討する方は少ない)。