「仕事から離れざるを得ない時期」みんなは何に悩み、どう乗り越えたのか?写真はイメージです Photo:PIXTA

人生には出産や介護、思わぬ病気など、さまざまなイベントがあります。一般的に、働けない時期を「キャリア中断期」と言ったりしますが、中断は悪いことではありません。労働寿命が延びる現在、時に立ち止まり、生き方や働き方を見直すことも必要です。

※本稿は、徳谷智史『キャリアづくりの教科書』(NewsPicksパブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

キャリアとライフイベント(出産・介護など)

 キャリアの選択において、触れておかなければいけないことがある。キャリア形成と、ライフイベントの関係性だ。キャリアについて、何らかの形で直接的に影響が出ることも多いため、切っても切り離せない。

 出産や介護、また、思いもよらぬタイミングでの心身の不調により仕事に思うように集中できない時期を一般には「キャリア中断期」と言ったりもするが、そもそも「中断」は悪いことではない(出産した女性には、一時的ではあれ必ず訪れるのだから)。しかし「中断」という言葉には、進むことが是で、止まることが非というニュアンスが感じられるため私はあまり使わない。

 言うまでもなく、人生の中で仕事から離れる時期が訪れることが、キャリアにネガティブに影響しない世の中が理想だ。ただ、現実として残念ながらまだそうなっていない部分もあるため、ここでは個人ができること、考えておくべきことを中心に書いていこうと思う。「自分にはまだ関係ない」と思われるかもしれないが、介護や病気は思ってもいなかったタイミングで発生する。性別や年齢を問わず、いつでも起こりうるものと捉えてもらえると嬉しい。

 高度経済成長期のように、「一般的」なライフスタイルというのは定義しづらくなった。キャリアにかぎらず、個人の生き方自体が多様化している。その変化に伴い、「プライベートも含めたキャリアのあり方をどう考えたらいいのか」という質問を不安の声とともにいただくことも増えた。

 正直、ここは書くか悩んだ。プライベートなことは、プライベートであるからこそ、何を書いても誰かを傷つけてしまう。ただ、それでも20年近くキャリアに携わった自分に溜まった知見は共有したほうがいいのでは、と考えた。個人が書く以上、完全に客観的になることは難しいのだが、私のもとに寄せられた情報・ファクトと、そこから考えられる対策を、あくまでキャリアづくりの観点から、できるかぎりフラットに伝えたいと思う。

 本稿では、「将来の漠然とした不安」「直近の不安」「すでに直面している不安」の3つのパターンの中から、「すでに直面している不安」について考えてみよう。