ジャクソンホールで会場を歩くパウエルFRB議長、植田和男日銀総裁、ラガルドECB総裁ジャクソンホールで会場を歩くパウエルFRB議長、植田和男日銀総裁、ラガルドECB総裁Photo:Bloomberg/gettyimages

来年前半の米利下げシナリオ
パウエル議長も否定せず

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、8月25日のジャクソンホール講演で、「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある」と述べた。一方で、パウエル議長は、「さらに引き締めるか、政策金利を一定に保って、さらなるデータを待つかを、慎重に決めたい」とデータ重視の柔軟な金融政策スタンスを維持した。また、先行きの利下げシナリオを明確に否定することはなかった。

 米金利市場は、9月連邦公開市場委員会(FOMC)以降の追加利上げの可能性をある程度織り込みつつ、年内の米利上げ停止と来年前半の利下げ開始を想定している。

 1989年以降の米利上げ停止と米利下げ開始の間隔は4カ月から1年半である。FRBが今年9月か11月のFOMCで最後の利上げをし、来年前半に利下げを開始した場合、利上げ停止から利下げ開始までの間隔は過去の経験則からみて妥当といえる。

 外部環境から考えても、米金利市場が利上げ停止とその後の利下げを予測するのは自然だろう。コロナ禍に伴う過剰な家計貯蓄は、ピークに比べてほぼ半減していると試算され、家計が貯蓄を取り崩して消費に回す余裕が減っているためだ。またパウエル議長は、ジャクソンホール講演で、金利上昇によって銀行の貸出態度は厳しくなっており、貸出増加ペースも急速に鈍化している点に言及した。