私が「今、梨元さんがいてくれたら」と思うのは、同じくジャニーズと戦った身として、外国のテレビ局が放送し、日本特派員協会で被害者たちが証言するようになってから、急に「反省」とか「報道すべきだった」などと、格好のいいことを言い出すキャスターやメディアが続出したからです。

メディアが何も報じなかった
『週刊文春』の勝利

 私は彼らの言葉などまったく信じません。週刊文春がジャニーズ裁判に勝利したときは、ほとんどのメディアが報じませんでした。そしてその後、数々の嫌がらせを事務所から受けました。ジャニーズのタレントが出ている広告の誌面を週刊文春で使用することは許されず、新商品の発表会でジャニーズタレントがCMをしている場合は、広告部は出席を許されませんでした。小説が映像化され、帯に主人公役の俳優の写真を使うのが出版界の常套手段でしたが、文春に写真を出す許可はなかなか出ません。

 こうした対応は、あまり気持ちのいいものではありません。ジャニーズキャンペーン当初は、間に立つ人がいて、双方の話し合いが行われたこともあります。あの記事は性加害だけを問題にしたわけではなく、未成年の深夜労働、飲酒、喫煙の放置、そして演技や踊り、歌を正式に訓練しないため、アイドル時代が終わったら何もできないタレントがあまりに多い――。そうした切り捨て主義も問題にしていました。

 こうした問題については、話し合いで解決策も提示され、実際、今は東山紀之氏に代表されるように、時代劇の主演までやって生き残れるタレントが増えました。

 これは報道の成果だったと思います。しかし、肝心の性加害だけは、まったく相手が触れてきません。それどころか、文章では書けない重い交渉事なども生じたため、裁判になったというのが真相です。

 こんな経緯を知っているからこそ、梨元さんはジャニーズに厳しい発言をし、とうとうテレビからほとんど姿を消し、『梨元チャンネル』など先駆的な動画やブログで対抗するという時代が続きました。