ある箱には、祖父が亡くなる二週間前にくれたノートと思い出の品があった。祖父は最後の二十年間を、ホロコーストの生存者に職と尊厳を与えるための事業に費やした。当時、祖父は僕の最大のヒーローだった。

 僕が、まだ、ヒーローの存在を信じていたときのことである。

 高校時代の年鑑が同じ箱から出てきた。ページをめくると、彼はいまどこにいるのだろうかとか、なぜ連絡を絶ってしまったのだろうか、という好奇心や後悔の念が次々と湧いてきた。

 子ども時代のいじめっ子の写真が僕の反対側にあるのを見て、彼は僕を苦しめるために生まれてきたのだ、と改めて思った。大好きだった教師の写真もあった。聖公会の若い牧師だった彼の影響で、僕は考え、書き、自分には人のためになることをする義務があると信じるようになったのだ。

 その先生とも、高校時代の親友とも、いまは疎遠になっていた。

(3月7日に続く)


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『僕は人生の宿題を果たす旅に出た』
 ~失った人間関係を取り戻す
  10のストーリー~

誰もが抱えている心残りや後悔。失ってしまった昔の人間関係を取り戻す勇気をくれる奇跡の実話。忙しい現代社会に生きる私たちに、何が一番大切かを気づかせ、今からでも間に合う、関係修復の方法を教えてくれる。長年の肩の荷を今こそ下ろして、人生で一番大切なものを取り戻そう!

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目次

プロローグ  職を失って気づいた、やり残した10の「宿題」
宿題1  15年間音信普通のおばを探して会いに行く
宿題2  娘を失った友人に言えなかったお悔みの言葉を伝えよう
宿題3  30年以上前に借りたままになっている600ドル。彼は許してくれるだろうか
宿題4  9.11以来、気がかりだったパキスタン人の元ルームメイト
宿題5  僕をいじめたアイツをずっと憎んでたんだ
宿題6  高校時代の恩師にどうして「ありがとう」を言えなかったのか
宿題7  陽気なマットは偏狭な原理主義者に変わってしまったの?
宿題8  意外なところにあった、父さんとおじの関係修復の糸口
宿題9  仕事を口実に行かなかったお葬式
宿題10  難民キャンプで少年と交わした約束を今こそ果たそう!
エピローグ   人はいつでもやり直せる