新日本酒紀行「ササノメグリ 碧笹」蔵は「秦野名水うるおいスポット」に認定され、仕込み水を提供 Photo by Yohko Yamamoto

秦野唯一の酒蔵が新たな息吹を吹き込んで挑む、爽快な酒

 丹沢山地と丘陵に囲まれた秦野盆地は神奈川県唯一の盆地で、良質な地下水に恵まれ、「秦野盆地湧水群」は名水百選にも選出された。その秦野市で唯一残った酒蔵が金井酒造店だ。女性蔵元の佐野リキさんが、1868(明治元)年に創業したが、業績悪化と後継者難で、6代目の博之さんは生き残りを懸け、2021年にM&Aの道を選ぶ。中小企業の再生を手掛けるくじらキャピタルが再建に取り組んだ後、23年1月、ジェントルゆうすけさんが代表を務める地域活性化事業を行うローカルエージェントカンパニー、ココハダLABへ譲渡された。ゆうすけさんは「秦野を元気に」を合言葉に事業を展開。秦野を発信するメディアや、秦野産の茶葉を使ったビールの商品化、地元の素材を生かすレストランなどを手掛けるが、酒蔵の運営は初めて。大きな賭けだったが、地域に開かれた酒蔵を目指すと決心。