もしも「5年後にライドシェアを解禁する」なら?
皆が得をするために必要なのは「時間軸」
あくまで仮の想定ではありますが、たとえば、
「5年後の2028年に東京都ではライドシェアを解禁する」
と決めたとしたらどうでしょうか。
競争を公平にするために、
「その場合、人を乗せて運転する営業車のドライバーに対しては、2年後の2025年からタクシー会社の研修があれば2種免許を不要とする」
そしてさらに、
「タクシー会社は2025年からライドシェア営業も実験的に先行して行うことができる」
といった形の時間軸を加えた解決案が出現したらどうなるのかを考えてみましょう。
仮案とはいえ、このような時間軸のロードマップがあるとタクシー会社側は新しい投資戦略を作ることができます。人材の採用については2年後以降、今よりも難易度がひとつ下がります。ちなみに2種免許を廃止できないのであればライドシェア解禁は無理だと私は思っていますが、ここは異論がある方もいらっしゃるかもしれません。話を続けさせていただきます。
時間軸を設けることによる一番の優位性は、タクシー会社のアプリがウーバーなどの海外アプリに対抗する時間ができることです。仮に今使われているタクシーアプリにアメリカのライドシェアサービスと同じ機能が実装されたとします。
その上で2025年から3年間は、消費者はライドシェアにはタクシーアプリが使えるようになるわけです。たとえばクリスマスの深夜、六本木でどうしてもタクシーが捕まらない場合、タクシーアプリのライドシェア機能で価格を見て「六本木―新宿8000円で」と通常よりも価格を高めにすることでタクシーを捕まえられるかもしれません。
逆にタクシーが空いている時間帯には普段より安くライドシェアタクシーを呼ぶこともできるようにします。この実験期間が3年間あれば、タクシー業界も将来ライドシェアに移行した場合の価格戦略を立てやすくなります。何より日本のライドシェアでは日本のタクシー会社のアプリがデファクトとして先に登録ユーザーを集めることができるのは、競争優位になるでしょう。
私はライドシェア推進派の皆様には、反対派のタクシー業界と対話をするために、こういった既得権益を含めた移行計画を提示すべきだと思います。
あとここは議論が分かれるところだと思いますが、私はライドシェアの本格解禁後(この仮の時間軸では2028年以降)にはライドシェアのドライバーに免許のようなものを新たに与える制度を作る必要はないと考えています。それは最近解禁された電動キックボードの免許議論にも通じる考え方です。
電動キックボードが法改正で無免許でも運転できるようになった結果、交通ルールを守らないユーザーが社会問題になっています。日本人の発想だと講習をきちんと受けさせるべきだと言いますが、それでは警察の外郭団体のブルシットジョブ(余計な仕事)を増やします。
アメリカ人の発想なら違反で捕まった人は次からキックボードを借りられなくすればいい。こういった自然に悪い運転をする人が淘汰されていく仕組みをアメリカのライドシェアは持っています。加えて、万が一事故が起きた時に無保険でも救済されるよう、ライドシェアのプラットフォーム側が保険制度を完備することも必要です。
こういった施策によって、研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切だと私は考えます。