タクシー業界の既得権益も
尊重する必要がある
一方で、ライドシェア解禁を願う消費者の側の論調にも問題があります。
ライドシェア解禁に反対するタクシー業界の既得権益をもう少し尊重すべきです。あまり認識されていないかもしれませんが、経済学では既得権益をとても重要なことだと教えます。なぜなら既得権益が守られない社会では誰も投資をしなくなるからです。
タクシー業界は本当はそれを主張したいのです。これまで国のルールで莫大な投資をしてきたのに、ライドシェアを解禁したらその投資が回収できない。これは実は正当な主張なのですが、それが世論に通りにくいから安全性の問題に議論をすり替えざるをえないのです。
とはいえ訪日外国人の増加、タクシー運転手の人手不足、過疎化地域などで移動難民の増加など、国内の状況的にはライドシェア解禁の必要性は高まっています。
2010年代にアメリカでウーバーがサービスを提供して以降、わが国でも何度も議論が行われてきたわけですが、アメリカ型のライドシェアは日本では極めて限定的な条件下以外では解禁されていません。
業界ではタクシーが不足するたびにタクシーの供給量を増やして消費者の不満を解消してきたわけですが、この計画経済的な仕組みには根本的な欠陥があって、タクシー会社にとっての経済的なラインを想定すれば台数は必ずピーク需要よりも少なめになりますし、採算に乗らないエリアは切り捨てられます。
ではこのライドシェア解禁議論はどうすれば前に進むのでしょうか。私は今の議論に加えるべきは「時間軸」だと捉えています。