「見たいものを見て、聞きたいことを聞く」のではなく
データを基に判断すべき
メディアは「一般市民はこう思っているはずだ」というネタを好みがちだ。そして、その国民のバイアスを裏付けるように、もっともらしいストーリーを報じている場合もある。
メディアからの取材が多い身としては、そうしたストーリーありきでニュースが作られていることに辟易(へきえき)する。バイアスを強化する情報やバッドニュースの方が、事実よりも数字を取りやすいのかもしれないが、そこに加担する気にはなれない。
私はコラムを書いたり動画メディアに出たりするが、そこで「自分の意見だけ」を述べることはまずない。先ほどの「空き家問題」の例もそうだが、私が伝えていることはエビデンスに基づいた情報だ。不動産コンサルタントとしての業務で得た一次情報(知見・データ)をお伝えすることも多い。
もちろん、メディアで報じられる情報の中にも元データが一般公開されているものがあり、このデータは一次情報に当たる。
ただ、そうしたデータの考察や取材を基に書かれた記事は二次情報であり、書き手の解釈や判断が入る。二次情報は人のフィルターがかかっているので、ニュースソース(元ネタ)を知りたければ一次情報を見に行く必要がある。
一次情報の身近な例が、前述した「国が発表した空き家調査」であり「日銀短観」だ。客観的データを基に、全ての通説を疑って、検証するのだ。それが先入観や偏見、思い込みなどによるバイアスに左右され、認識や判断を間違わないための防御策の一つである。
『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』というベストセラーがある。人間による思い込みには間違いが多いため、データや事実に基づいて世界を正しく見ることを推奨している。私はこの本と同じことを言っている。だが、多くの人間が「見たいものを見て、聞きたいことを聞きがち」なことからすると、私と違う考えの人はこのコラムすら読まないかもしれない。