野村総研が発表した予測値と
現実の驚くべき差
その予測とは「13年に約820万戸あった空き家数が、18年に約1076万戸まで増えるだろう」というものだった。このデータは空き家問題が語られる際によく引用されてきた。
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だがふたを開けてみると、総務省が発表した実態調査結果では、18年時点での空き家数は約846万戸。13~18年の5年間で約256万戸増えると予測されていたものの、実際は約26万戸しか増えておらず、野村総研の予測は桁違いの大外れになってしまった。
にもかかわらず、それ以降も「空き家問題」はセンセーショナルに報道されている。「日本の人口が減っている」「新築物件がたくさん建てられている」という前提知識を基に、メディアが「だから古い家が急増している」というストーリーを描きやすいからだと思われる。
一方で、空き家の取得経緯について国土交通省が調べたところ、50%以上が「親から相続した」と回答。「不明・不詳」は4%だった。また、空き家を保有する人の約60%が、空き家にしておく理由を「物置として必要」だからだと説明していた。持ち主不明のまま朽ちていく物件ばかりではないのだ。
空き家が増えていたり、買い手が付かなかったりするのは事実かもしれないが、その増加ペースは人々の思い込みより遅い。そして、異臭などを放たない場合は近隣に迷惑をかけることもない。親から相続され、物置として使われている物件が大半なら「大問題」というほどでもない。
にもかかわらず世間一般では、今にも崩れ落ちそうな空き家が急増しているかのように思われている模様だ。これはバイアスが悪さをした結果ではないだろうか。