国際的な水産物の高騰と争奪戦が過熱する中、日本の「買い負け」リスクが一層高まっている。なぜ日本は水産物の争奪戦で後れを取っているのか、日本が買い負けリスクを回避するすべはあるのか。特集『食料争奪戦 日本の食卓が危ない』の#2では、マルハニチロで水産事業の責任者を務める粟山治専務のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
メロは3倍、ロブスターは2倍以上に
中国の台頭で水産物価格が高騰
――水産物の価格が軒並み上昇し、日本が国際的な争奪戦の中で「買い負ける」リスクが大きな問題になっています。まず、どのような水産物で価格上昇の影響が大きいですか。
例えば、直近で価格上昇が激しいのが輸入の養殖サケですね。日本の量販店で切り身として売られている一番ポピュラーな銀ザケだと、この1~2年前と比較して3割ほど上昇しているとみていいのではないでしょうか。「世界的な消費の拡大」で魚価が上昇していることに加え、「輸送費の上昇」と「円安」がトリプルで直撃しています。
新型コロナウイルス感染拡大のさなかには、経済活動の停滞で需要が落ち込み水産物の価格は軒並み下がったのですが、いまは欧米での消費が復活していることもあり、足元の魚価の高騰を招いています。
より以前から見れば、中国を筆頭とする、高級水産物の引き合いの高まりも魚価高騰を招く要因になっています。
われわれが扱っているメロ(銀ムツ)は、過去に1キログラム当たり10ドル程度だったものが、中国が先導する形で一時30ドルぐらいまで上がりました。この価格では、とても国内で販売できません。
あるいは、ロブスター。過去15~20ドルぐらいで日本が買い付けていたものを、コロナ禍前には中国に50ドルで売っていると、オーストラリアの現地から聞いたこともあります。
中国はいま、上海のロックダウンなどの影響で需要が落ち着いています。それでも、これは一時的な現象でしょう。以前に想像できなかったほど、新しい需要が生まれているのは確かです。
――中国などに対して、片や日本は長期的な経済停滞やデフレマインドもあり、国際的な購買力が落ちています。日本が採れる打開策はあるのでしょうか。