肉と魚の経済学#10
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近年、漁獲量の激減で高値が付くことが話題になる秋の風物詩、サンマ。実はサンマの価格高騰の裏には不漁のみならず、「サンマ地政学」とでも呼ぶべき国家間の争いが潜んでいる。特集『肉と魚の経済学』(全13回)の#10では、複雑に絡み合ったサンマ地政学をひもといてみよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

漁獲量はピーク時の10分の1、価格は5倍…
日本のサンマは消滅してしまうのか?

 1匹100円と庶民の味方の魚だったはずのサンマが今年9月、ついに1匹500円という驚きの高値で売り出された。魚好きであれば毎年欠かせない脂の乗ったサンマの塩焼きは、今年はいよいよ本格的な高級料理となってしまった。

 漁業情報サービスセンターによると、今期10月26日までの全国のサンマ漁獲量は約9200トン。過去最低だった2019年シーズンの10月時点までの漁獲量のさらに半分ほどの水準しかない。もともとサンマは、漁獲高が19年通年で4.6万トンと、20年前に比べて67.5%、ピーク時の1958年からは92%減少するなど(本特集#6『世界の漁獲量が過去最高を記録する一方、日本は20年で4割減の深刻理由』参照)特に減り方が「えげつない」魚だった。20年通年での漁獲高も、この調子だとさらに絶望的な水準まで落ち込みそうである。

 殿様が下町で食べたサンマの味を忘れられずに珍騒動が起きる落語「目黒のさんま」で知られる通り、日本人は江戸時代からサンマを取って食べ続けてきた。まさに日本人の生活に根付いた魚でもあるが、実はここ最近は“国際派”に変貌しつつある。国際派ならではの、地政学的な各国の駆け引きが、漁獲量が激減しているサンマ事情の裏側にはある。

 そもそも、日本人になじみの深い魚と書いたが、実はサンマは“日本在住”ではない。