愛し方、愛され方がわからない

 崩壊してしまった家庭においては、健全な愛情を与えることも受け取ることもできません。
 そして健全な愛情を知らずに育つと、愛情とのつき合い方自体を知らずに大人になってしまいます。

 ほとんどの場合、子供のとき欲しくとも手に入らなかった愛情を大人になってからも求め、与えようとします。

 自分を愛し返してほしいがためだけに誰かを愛そうとしたり、誰かを愛すことで、心にぽっかりとあいた穴を埋めようとしたりします。
 あるいは、愛そのものを遠ざけようとするかもしれません。

 自分の愛着スタイルを知れば、なぜ自分が愛に対して不安定なのか理解できるでしょう。

 誰かを愛するとき、あなたは安心感からではなく自分の痛みをやわらげるために愛しています。
 心に傷を負ったせいで、愛を失うことを恐れているのです。
 愛を失えば一巻の終わりだとでもいうかのように。

 誰かに愛されているときのほうが、自信もつきますし、幸せを感じられるでしょう。
 ですが、ひとたびその愛を失ったら、生きる意欲を削がれ、自分は愛されない人間だと思い悩むでしょう。

 たとえあなた自身の選択で関係を終わらせたのだとしても、繰り返し愛を失うたびに、あなたの中の一番奥深くに根を張っている恐怖が顔を出します。

 もしかすると、家族の言い分は正しかったのではないか。彼らが言う通り、自分はどうやっても愛されない人間なのかもしれない、という恐怖です。

 あるいは、誰もあなたと長く関係を続けたいと思うほど、深い愛を感じてくれないのだと結論づけるかもしれません。

 不安定な愛着スタイルを持っている人が一番恐れているのは、自分が、誰かに時間や思考、努力、情熱を割いてまで愛してもらえるような価値のある人間ではないという考えです。

 このような、人生の大部分に影響を及ぼす不安定さを抱えながら生きていくのは、途方もなく大変なことです。
 ただでさえ世界は不確実なものに満ちているというのに、愛情や愛着に関する問題を抱えているとなると尚更です。

 コミュニティーへの帰属意識と幸せには相関関係があるといいますが、そもそも愛情や愛着の感情を恐れている人が、どうしたら他人とつながれるのでしょう。

 あなたが今も抱える強い不安を取り除くには、まずそれがどこから来たのかをはっきり認識することから始めるといいでしょう。

シェリー・キャンベル(Sherrie Campbell, PhD)
毒家族に苦しむ人々を救う心理学者であり、家族との絶縁を手伝う専門家として全米で知られている。かつてBBM Global NetworkとTuneIn Radioで自身のラジオ番組「Dr. Sherrie Show」を主宰していた。講演者、SNSのインフルエンサーとしても知られ、メディアにも頻繁に取り上げられている。著書に『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)などがある。

※本稿は、シェリー・キャンベル著 髙瀨みどり訳『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。