デジタル・アナログを問わず、ネット上の書き込み、レビュー
新聞、ラジオ、テレビ、雑誌などすべて「ステマ規制」の対象

 ステルスマーケティングという言葉自体は、2012年頃から話題になり始めた。2012年に発覚したペニーオークション詐欺事件では、複数の芸能人が広告であることを伏せて、自らのブログでペニーオークションサイトを使って商品を安く購入できたとおすすめしていたため、犯罪行為に加担したのではと大きな話題となった。山本氏が所属するクチコミマーケティング協会(WOMJ)では、2010年から、ステルスマーケティングを防止するための指針「WOMJガイドライン」を策定している。

 消費者庁がステマ規制に乗り出した理由を山本氏に尋ねた。

「私が分かる範囲でさかのぼると、2021年の時点で消費者庁の景表法の検討会でアフィリエイト広告が問題視され、その流れでステルスマーケティングについても検討が始まりました。その経緯で、最初はデジタルだけが対象となっていたのですが、検討を進め、景表法の指定告示で対応するとなったときに、デジタルだけでなく(景表法の定める)『表示』のすべてが対象となりました」(山本氏)

 ステマ規制は、商品またはサービスについて行う表示であれば、すべてが対象となる。インターネット上の表示(SNS投稿、ECサイトのレビュー投稿など)だけでなく、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などが該当する。

 また、規制の対象となるのは、「商品・サービスを供給する事業者(広告主)」だ。ここに、インフルエンサーやアフィリエイターなどは原則として含まれない。規制の対象となる事業者や広告主は、違反行為が認められた場合、消費者庁(あるいは都道府県)により告示違反に対する措置命令が行われる。もし、表示内容に優良誤認や有利誤認もある場合は、加えて課徴金など景品表示法上の措置を受けることになる。

 であれば、商品やサービスの宣伝活動を行っていない、一般の人にはあまり関係がない規制なのだろうか。

「ステルスマーケティングは一部のインフルエンサーだけに関係するものではありません。冒頭のアイスクリームの例では、SNS投稿を行った本人は罰せられることはありませんが、行政処分等で店主に迷惑をかけることになりかねません。また、行政処分の対象にはならなくても、『あの店はステマをしたらしい』という悪評が立ってしまう可能性もあります」(山本氏)

 良かれと思ってしたことが、自分の大事な人に迷惑をかけてしまうかもしれない。ステマ規制は“普通”の人にとっても、他人事ではないのだ。