ジャニーズ問題では「日本と海外の温度差」がある。海外は、性加害を含む人権問題を“過敏なほど”気にしている。“過敏なほど”とあえて書いたのは、恐らく現時点の一般的な日本人は、そう思うからだ。しかし、そうした感覚こそがもはや世界標準とずれている。もはや人権は建前ではなく、実利に直結する。日本人はどうも、この点が疎いと思われる。世界標準に意識を変えないと、赤っ恥もかくし、経済面でも負け越しだ。それは芸能の世界でも、サプライチェーンでも同じことだ。(未来調達研究所 坂口孝則)
ジャニーズ事務所の性加害と
スポンサー企業の反応
ジャニーズ事務所の性加害事件のニュースがひっきりなしに続いている。9月7日に事務所は記者会見を行い、ひたすら長い会見の中で、ジャニー喜多川氏の性加害を認めた。
その会見はさまざまな反響を呼び、ジャニーズに所属するタレントと関わるスポンサー企業をも動かすことになった。ジャニーズのタレントを起用しないと決めた企業、契約の更新はしないと決めた企業、一方で使用を継続すると決めた企業もあった。
企業は世間からお金をもらっている以上、今回の問題から目をそらすことはできない。企業は、収益を稼ぎ、社員に報酬を払い、株主にも還元する。消費者や取引先にお金を払ってもらわねば、存続できない。
一般的には、海外の方が性加害に厳しい目が向けられる。例えば、少女への性的虐待で逮捕された米国の事業家で富豪のジェフリー・エプスタイン氏がいる。この件では、氏からの献金を受け取ったことが原因で役職を追われた人がたくさんいる。
つまり、間接的に性加害に加担したと見なされた人々も社会的処分の対象になったのだ。日本もこの事実を極めて重く受け止めた方がいい。海外展開する企業であれば、海外の消費者からそうした厳しい目線で見られていることを自覚すべきだ。
他方で、これまでジャニーズの性加害は“公然の秘密”だった、それでもタレントを使い続けてきた企業は“手のひら返し”じゃないか、という指摘がある。