「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。(初出:2022年10月14日)
筋肉は年1%減っていく
【前回】からの続き 運動不足だと、筋肉は30代から1年に1%の割合で減っていきます。なかでも、落ちやすいのが、血液循環で活躍する下半身の筋肉です。「老化は足腰から」というのは、本当なのです。
下半身の筋肉が衰えると、血液循環を促すポンプ機能も衰えてしまいます。そこで必要とされるのが、下半身の筋肉を鍛えることです。
下半身を鍛える運動といえば、定番は「スクワット」。その場で深くしゃがみ、立ち上がるというシンプルな動作を繰り返す運動です。認知症予防の本には、必ずといっていいほど、スクワットに代表される下半身の運動が紹介されています。
なぜスクワットは続かないのか?
座学はこのくらいにして、早速、スクワットのやり方を紹介しましょう……とならないのが、本書のミソです。誤解しないでください。私はスクワットを否定しているわけではありませんから、できる人は、どんどんやってください。
スクワットがちゃんと続けられたら、下半身が鍛えられて血液を巡らせるポンプ作用も強くなり、認知症予防にも大いに役立つでしょう。スクワットに限らず、NHKの「みんなの体操」でも、足腰を動かすものなら、なんでもOKです。
もっとも、スクワットなどの高い強度の運動を続けられる人は、少数派ではないでしょうか? 1日や2日なら頑張れても、大半は三日坊主で終わってもおかしくはありません。その理由の1つは、「筋肉に効いている」「脳にも効いている」という実感が得られにくいからでしょう。
運動全般において継続できない人が多いワケ
スクワットのような運動は、3ヵ月、半年とコツコツ続けることで、筋肉が強く大きくなるなどの目に見える効果が表れます。もっというと、認知症予防に効果があったかどうかは5年、10年、15年という長い目で見る必要があります。
まさに「継続は力なり」なのですが、結果が出るまで続けるモチベーションを保つのが難しいのです。
現代人は、どんどんせっかちになる傾向があります。ネット通販で何か買ったら、翌日には玄関先に届いていますし、ピザを頼むと、30分以内にやって来ます。そういうスピード感で生活していると、月単位・年単位の我慢ができなくなり、運動を続ける意欲も低下しやすいのかもしれません。
運動全般において継続できない人が多いワケ
スクワットが続かないのは、あなたの意志が弱いからではないのです。正直に告白すると、私はこれといって運動らしい運動はしていませんし、スクワットもやっていません。
もしも医者から運動不足解消にスクワットをすすめられたら、「先生はどのくらいの頻度でスクワットをやっていますか?」と聞いてみてください。たぶん多くの医者は、「なかなかやる暇がなくてねぇ」などと苦笑するのではないでしょうか。
医者という仕事は、患者さんがいらっしゃる限り、自分そっちのけで診察しないといけません。患者さんの緊急時には、真夜中でも休日でも対応します。少なくとも私は、父からそうするようにと教わりました。ですから、運動する時間をつくるのは難しいもの。「医者の不養生」とは、よくいったものです。
※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。