直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】「歴史小説」と「時代小説」の違いとは?Photo: Adobe Stock

「歴史小説」とは何なのか?

歴史小説という文芸ジャンルについて、いろいろな角度から解説していきたいと思います。

まず、そもそも「歴史小説」とはいったいどういうものなのでしょう。歴史小説の定義はさまざまあり、どれが正解とも言い切れません。

ただ、簡潔にいうと、歴史小説とは「歴史的な事件や人物をテーマにして、史実をもとに書かれた小説」のことです。

「歴史小説」と「時代小説」の違い

ここで読者の中には、こんな疑問を抱く人がいるかもしれません。

「『時代小説』というのも聞いたことがあるけど、歴史小説とどう違うの?

実は、あえてここまで時代小説という言葉を出すのを避けていましたが、実は歴史小説と似たジャンルに時代小説があります。

「時代小説」の特性とは?

時代小説とは、古い時代の事件や人物を素材とした小説を意味します。

そう聞くと「同じじゃないか」と思われそうですが、歴史小説が史実を重んじるのに対して、時代小説は単に過去の時代を背景にしているという違いがあります。

別の言い方をすれば、時代小説はフィクション性がより強く、その時代を生きた人と人との関わりを濃密に描く傾向があります。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。