歴史小説の主人公は、過去の歴史を案内してくれる水先案内人のようなもの。面白い・好きな案内人を見つけられれば、歴史の世界にどっぷりつかり、そこから人生に必要なさまざまなものを吸収できる。水先案内人が魅力的かどうかは、歴史小説家の腕次第。つまり、自分にあった作家の作品を読むことが、歴史から教養を身につける最良の手段といえる。
直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、歴史小説マニアの視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
歴史小説の読者はマニアック?
【前回】からの続き 経営者や政治家が歴史小説や歴史について語る場面もめっきり少なくなっています。
中高生でも歴史小説の愛読者は、マニアックな扱いをされているはずです。
この現状は、歴史小説の書き手の1人として忸怩たる思いがあります。
歴史小説とゲームの関係
歴史小説に代わり、若者と歴史をつなぐ役割を担っているのはゲームといえるでしょう。
織田信長や豊臣秀吉は、ゲームキャラクターとして人気を誇っています。
歴史好きの立場からいえば、ゲーム業界の貢献は本当にありがたいと感じています。
ゲームから歴史小説へ
ゲームをきっかけに少年少女が歴史に興味を持ってくれたら嬉しい限りです。
ただ、現実にはゲームと歴史には懸隔があるように思えてなりません。
ゲームが描く歴史は改変の度合いが大きすぎるがゆえ、歴史好きへとスムーズに誘導しにくいのです。
自国の歴史を知らない
世界的に見て、自国の歴史さえ知らない国民というのは、相当不思議な存在です。
日本は長い歴史を有する国で、アメリカなど歴史の浅い国の人たちから羨ましがられるくらいです。
せっかく長い歴史があるのに、それを知らない、そこから学びとれていないというのは、国家的に大きな損失ともいえるでしょう。【次回に続く】
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。