電車に乗り込む人々写真はイメージです Photo:PIXTA

新型コロナによって社会全体的にテレワークやデジタル化が進み、利便性が良くなった。一方で、大打撃を受けた企業もある。その一つが「鉄道会社」だ。2020年度の鉄道会社各社の売上は過去最大に減少した。1872年(明治6年)の鉄道開通から約150年が経過した今、具体的にどのくらい乗客が減ったのか、むしろあまり減らなかった路線はどこなのかなど、鉄道ビジネス研究会『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋・編集してお届けする。

首都圏で乗客が最も減った路線はどこか

 コロナ禍以降、明らかに乗客が減っていると感じたことだろう。では、いったいどのくらい減ったのか、具体的に数字で確認していこう。国内で最も乗客が多く、広範囲で営業しているJR東日本が詳細なデータを公表している。まずは、首都圏の状況を見ていく。

 日本国内で「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」が施行され、法令において「新型コロナウイルス感染症」と定められたのが2020年2月1日。2019年度に発生し、2020年度に入ると、テレワークなどを実施する企業が相次いだ。

 その点を踏まえ、まったくコロナ禍の影響を受けていない2018年度と2020年度の乗客数を比較していく(表1-2参照)。

表1-2_首都圏の主なJR路線の乗客の減少率首都圏の主なJR路線の乗客の減少率 画像:ワニブックス 拡大画像表示

 まず、首都圏で最も乗客が減っているのは、成田線(成田~成田空港間)である。減少率は実に75.6%にも及ぶ。乗客が4分の1にまで減っているわけで、まさに終日「ガラガラ」の状況だ。この状況は、首都圏から成田空港を結ぶ特急、成田エクスプレスの利用者減がほぼ直接的に影響している。もはや鉄道路線の話ではなく、成田空港の利用者減の深刻さを表す数字といってもよいだろう。

 次いで高い減少率を示したのが、中央本線(大月~甲府間)で61.2%。そして、中央本線(高尾~大月間)で55.8%だ。この路線は、2022年3月現在では、特急かいじが上り下りともに14本、特急あずさが上り下りともに16本走っており、そのほか臨時列車も走っている。この首都圏を走るなかでは長距離の部類となる特急の乗客減が大きく影響している。

 ちなみに、特急かいじにおいては、この本数は2020年3月のダイヤとほぼ変わっていない。特急かいじは、おおよそ1時間に1本ペースでの運行なので、そこから本数を減らすと乗客にとってかなり不便となるので、それは避けたようだ。一方で、より速達となる特急あずさは、2020年3月時点では上りの定期便が18本で、臨時便が7本走っていたので、コロナ禍後は定期便を少し減らし、臨時便をほぼなくしている。