郊外のほうが乗客が減っている

 その後も、成田線(佐倉~成田間)、八高線(高麗川~倉賀野間)が減少率50%を超えている。

 減少率が40%台を示すのは、常磐線(取手~土浦間)の48.0%、常磐線(土浦~勝田間)の44.2%の2区間。そして、高崎線(熊谷~高崎間)38.2%、総武本線(千葉~佐倉間)37.5%と続いていく。以降も外房線(茂原~勝浦間)や成田線(成田~我孫子間)、常磐線(高萩~いわき間)が減少率上位に入り、要するに首都圏のなかでも郊外のほうが、乗客が減っている傾向にある。

 東京23区内を走る列車に絞ると、最も高い減少率を示したのは山手線で36.5%だ。ただし、ここでいう「山手線」はJR東日本の集計上、品川~新宿~田端間を指しており、そこを走る埼京線の乗客も含まれる。いずれにせよ、私鉄で池袋駅や新宿駅に出た人が乗り継いで利用することも多い路線なので、都内への人流が減った影響が出やすい路線だ。

首都圏の主要路線の多くが乗客3割減前後

 都内を走るメジャーな路線の動向を見ていこう。減少率はどの路線も極端な差は見られず、おおよそ30%台中盤あたりとなる。中央線(神田~高尾間)が35.0%減、東海道本線(東京~大船間など)が32.4%減、埼京線(池袋~赤羽間)が31.7%減、総武線(東京~千葉間)が31.3%減、常磐線(日暮里~取手間)が31.2%減となる。

 都内の鉄道の人の流れはおおよそ3割強ほど減ったといえるが、多くの人の体感とそう大きく変わらないのではないだろうか。

山手線は1日あたり41万人の乗客が減っている

 ところで、ここまで減少率で話をしてきたが、人数ではどれだけ減っているのか。

 1日1kmあたりの乗客数を平均通過人員、もしくは輸送密度という。この平均通過人員は、2018年の山手線(品川~新宿~田端間。以下同)は113万人であった。

 誤解しないように平均通過人員について、もう少し説明をしておくと、この人数に路線の距離を掛けたものが“乗客数”というわけではない。1人の客が乗る距離、乗り降りする駅は、当然ながらまちまちである。それを均して、常に1日あたり113万人の客が乗っていると考えてもらえばイメージしやすいのではないだろうか。

 加えて言えば、その平均通過数量に路線距離の20.6kmを掛けると山手線が「どれだけの人数を、どれだけの距離を運んだのか」が算出され、その算出で出された数値を「輸送人キロ」という。ほとんどの人にとって耳慣れない単位だろうが、多くの人が長い距離を乗車する路線――たとえば東海道線や中央線はこの数字が大きくなる。その路線の輸送規模を表すために、鉄道業界で用いられている単位だ。

 山手線の場合は、この輸送人キロは実に2327万人キロとなる。この数値をイメージしやすいように例を言うと、1000万人が2.3kmずつ乗車する、もしくは100万人が20.3kmずつ乗車すると、おおよそこの数値となる。