日本の政治家は選挙のため
イベントに「無償」で出るのが当たり前

 日本の政治家は、日頃から世話になっている支持団体、派閥の関係者、政治信条を同じくする政治団体、地元企業、選挙区内の学校、高齢者施設、そして宗教団体などのイベントに「無償」で挨拶をしに行ったり、祝辞を送ったりする。

 筆者の知り合いの国会議員は、複数の宗教団体から支持を受けているので、何かイベントがあるたびに数珠をもったり、十字架も首から下げて、「無償」で参加をしてスピーチをしている。節操がないとあきれるだろうが、政治家とはこういう全方位外交をしないと選挙に勝てない。

 もっと言ってしまえば、政治家が政治的なイベントに「無償」でビデオメッセージを送るくらいのことは、ちっともおかしくないし「当たり前」だ。

 マスコミ報道ではほとんどちゃんと報じられないが、安倍元首相がビデオメッセージを送ったのは「世界平和統一家庭連合信者の集い」というようなゴリゴリの宗教団体のイベントなどではなく、「まっとうな政治イベント」なのだ。

 筆者は銃撃事件のあった後、このイベントを主催したUPFの日本支部「UPF ジャパン」の梶栗正義会長にインタビューをして、このあたりを詳細に聞いている。以下に引用しよう。

<安倍元首相がビデオメッセージを送ってくれたUPFのイベントというのは、朝鮮戦争勃発から70年のタイミングで立ち上がった「シンクタンク2022」という朝鮮半島の平和的統一を目指す専門家のプロジェクトです。

この活動に関しては、世界で多くのVIPが賛意を示してくれておりフン・セン・カンボジア首相、マイク・ペンス元米国副大統領、潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長なども基調講演を行ってくれています>(プレジデントオンライン、22年8月12日

 日本の報道で我々が受ける印象では、「反日カルト組織のイベントに、カネ目当てのトランプと仲良しの安倍元首相が参加しました」という話になっているが、実はそれなりの国際的な政治家が賛同をしたプロジェクトにまつわる「政治イベント」なのだ。

「地球儀を俯瞰する外交」を展開していた安倍元首相はトランプ元大統領とともに、「朝鮮半島の安定」にも力を入れていた。そして、UPFもそれに力を入れていた。先ほども申し上げたように、日本の政治家は政治信条を同じくする団体に「無償」でビデオメッセージくらいは送ってやるものだ。

 そう聞いても「それは普通の政治イベントの話だ。トランプに3億払う団体が安倍元首相をタダで呼ぶわけがない」と思うかもしれないが、これも普通にある。日米では「政治とカネ」の感覚がまったく違うからだ。