「毎日新聞」が9月に実施した世論調査で、旧統一教会への解散命令請求に賛成する人は86%に上った。大多数が万歳三唱で歓迎する「正義の裁き」というわけだが、思わぬ落とし穴もある。特集『巨大宗教 連鎖没落』(全20回)の#8は、教団の「地下化」が始まる、海外移転やインターネットによる布教が増える理由を解説する。(ノンフィクションライター 窪田順生)
解散命令請求は「パンドラの箱」か
最悪の場合は宗教弾圧の再来も
今回の解散命令請求により、信教の自由を尊重する民主国家が、これまでやってこなかった「パンドラの箱」を開けてしまう恐れがある。最悪の場合、宗教弾圧の再来だ。なぜか。順を追って説明していこう。
まず裁判所の審査を経て解散命令が認められた場合、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は宗教法人の資格を剥奪される。
宗教法人でなくなるということは、都道府県知事と文化庁から管理されなくなることを意味する。これまで義務付けられていた役員名簿や財産目録、収支計算書の提出も必要ないし、文化庁が調査権を行使することもない。
一方、解散命令となったところで、信者が改宗するわけでもないので、献金も布教もこれまで通りに行われる。つまり、解散命令により旧統一教会の活動は「ブラックボックス化」される。
そこに加えて、被害者救済の点でも疑問点がある。政府が解散命令を請求しても裁判所がそれを認めるまで数年はかかるとみられ、その間、旧統一教会は財産を韓国本部に移動する。そうなれば被害を訴える人々が十分な賠償を得られない可能性もある。
解散命令請求は、他にも深刻な問題と混乱を引き起こす恐れがある。それが冒頭に述べた、宗教弾圧の再来だ。