安倍元首相が気の毒だと
筆者が思うワケ
森友・加計問題もそうだが、安倍元首相は明確な根拠がないまま「疑惑」を指摘されて、メディアからボロカスに叩かれてきた人だ。
「やってません」といくら反論をしても「やっていないという証拠を出せ」という警察の取り調べのように理不尽な自白強要をされて「推定有罪」扱いされていた部分もある。そのあたりは当時、筆者も以下のような記事で繰り返し指摘させていただいた。
『安倍首相もハマった、マスコミが疑惑だけで罪人を作る3つの方法』(2017年7月27日)
そして、凶弾に倒れてもなお「疑惑」が叫ばれて人々に「罪人」扱いされている。反論も釈明もできない状況で、旧統一教会と接点があったというだけで「犯罪者」扱いだ。政治家という業の深い仕事だったとはいえ、「死人にむち打ち」のような気もしてしまう。
しかも、保守の人たちは安倍元首相をあれほど持ち上げていたのに、「旧統一教会問題」が注目されてから多くの人はサッと引いてしまった。
毎日新聞の「安倍氏はなぜ無償で引き受けたのか疑念が浮かぶ」という記述に対して、「安倍さんはカネとかで動かない信念の政治家なんだよ」とか怒る人がもっといるかと思いきや、そうでもない。これまでの経緯から、「安倍元首相の名誉回復を求める会」とかできてもおかしくないはずだが、そういう動きもない。筆者のように生前、安倍政権の政策を批判的に見ていた人間が見ても、「安倍さんはもう反論できないんだから、保守の人たちはもっとかばってあげたら」と思うほど、気の毒すぎる扱いだ。
政治闘争的には「悪の権化」に見えたという一面もあるかもしれないが、国家に尽くして凶弾に倒れて亡くなった元首相でもあるのだ。国民の最低限の敬意として、公の場で「安倍」と呼び捨てにしたり、根拠のない誹謗中傷をするのはさすがに控えた方がいい、という気もするのは、筆者だけだろうか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)