日本の「お葬式」を飲み込む低価格競争、葬儀業界のブラックボックスをこじ開けるか?葬儀費用は2000年から2022年にかけて20%強も低下した(写真はイメージです) Photo:PIXTA

葬儀の低価格化が進展
背景に人口動態やコロナ

 葬儀費用の低価格化が進展している。経済産業省の特定サービス業動態統計調査によると、1件当たり葬儀費用は2000年の145万円から2022年には113万円と20%強も低下した。

 低価格化の背景には、以下の要因がある。

(1)人口動態の変化

(2)コロナ禍の影響

(3)新興業者の台頭

 1960~70年代に見られた大家族は大幅に縮小し、現代では都市部を中心に核家族や一人暮らしが増加した。この結果、親戚数が減少し、葬儀への参列者数が減っている。

 また、コロナ禍では葬儀への参加人数が制限され、食事を伴わない最低限の葬儀が求められた。当時は仕方なくそうしたわけだが、コロナ禍収束後の今も葬儀単価は回復しないままだ。

 こうして、限られた家族や友人による小規模の葬儀需要が高まった。今では葬儀会社各社が家族葬を展開し、通夜を行わない「一日葬」や火葬のみの「直葬」等も増加している。

新興企業の台頭も
低価格化に拍車をかける

 葬儀費用の低価格化に拍車をかけるのが、ネット系・ポータル系と言われる新興葬儀会社の台頭だ。死亡者数が2040年まで増加する日本では、葬儀業界は数少ない成長産業である。

 成長産業には、他業界からの参入も含め、多くの新興企業が現れる。「小さなお葬式」や「イオンのお葬式」が好例だ。

 ポータル系と呼ばれる新興企業は、従来型のように自社の葬儀会館を持たず、依頼主である遺族と提携葬儀会館・葬儀社への仲介を行うビジネスモデルだ。

 一部の新興葬儀企業は、葬儀に伴う資材を海外から一括調達してコストを下げ、低価格を実現している。情報がフラットになり、全国の葬儀業者の価格を比較して決定することが可能になった。これらが当たり前になり、葬儀業界の価格競争が激化している。