稲穂写真はイメージです Photo:PIXTA

家業の葬儀屋を1998年に引き継いだはいいが、死亡者数は年々減少し、葬儀の規模も縮小傾向のために業績は右肩下がり。そんな状況に直面した筆者は、事業の多角化に乗り出した。現在では農業など8つの事業を展開し、大成功を収めた筆者が教える、中小企業にとってのビジネスチャンスとは?本稿は、戸波亮『葬儀屋が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた』(幻冬舎メディアコンサルティング)の一部を抜粋・編集したものです。

米作りは廃棄物が多く
多角化に向いてる

 私の会社は葬儀業からスタートしましたが、近年は米作りに関連した新しいビジネスを芋づる式に広げていっています。精米したお米を自分たちで販売するだけでなく、米作りから生まれるさまざまなものを有効活用したり商品化したりしてお金に変えていこうという多角化です。もともと米作りには廃棄物が多く、私の考えとして、多角化に向いているものだったためです。

 例えば、稲刈りをすると稲藁が出ます。そのまま刻んで水田に残しておくと、本州であれば春までに腐敗分解しますし、牛のエサとして利用されるものもあります。ただ、気温が低い北海道では水田に置いておくと翌年の初穂の時期まで残って水田の窒素分が増え、米の味が低下する原因になります。

 あるいは、籾を摺って玄米にすると籾殻が出ます。稲穂に実った米のうち重量で実(玄米)が8割、籾殻が2割とされ、かなりの量になります。昔は野焼きして処分ができましたが、現在では法律で野焼きが禁止され、費用を掛けて廃棄物として処理しなければなりません。

 さらに玄米を精米する際には糠が出ます。かつて家庭では糠漬けに使ったりしましたが、今では廃棄物として捨てられるケースが多いと思います。私たちのグループには米販売会社があり、精米によって大量の糠が出ています。

 そのほか、籾摺りや精米の過程では規格外の米や割れた米が出ますし、返礼品や小売では米に賞味期限を設定しており期限切れの米も出てきます。

 こうした水田での米作りから出る廃棄物を処理するにはそれなりにコストが掛かる一方、もし再利用して商品化できれば、処理コストが浮くとともに新たな売上になります。

 近年、社会に広まっているSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の理念に即したものになると思いますが、この言葉が流行するずっと以前から、私たちは無駄を活かすことを重視して事業を展開してきました。