中国の葬儀トレンド
デジタル墓地が出現
一方、中国では別のトレンドが見て取れる。中国にも葬儀に関する「殯葬管理条例」という法律が定められているが、2018年の改正案の内容は驚きだ。改正案の内容は、土葬を規制し、火葬さらには散骨を奨励するというものであった。急激な人口増加を背景に死亡者数が増加している中国では、墓地不足が深刻な問題なのだ。
北京では2035年までに公共墓地の面積を現在の70%にまで減らすことを計画しており、デジタル墓地も出現している。
Beijing Jiuli Digital Technology Co.が運営するデジタル墓地では、建物の中に遺灰が保存できる。遺族はスクリーン上の写真やビデオを見て故人を偲ぶという仕組みだ。
上海でもデジタル墓地の普及が始まりつつある。実は、かつての日本でも土地不足により土葬から火葬へのシフトが起こった。近い将来、日本でもデジタル墓地の必要性が高まる可能性もなくはない。
日本の葬儀業界を
確固たる成長産業に
日本の葬儀業界は成長産業であるが、それゆえに新興企業も台頭し、低価格化に見舞われている。しかし、これは変化に対応できる企業にとって大きなチャンスでもある。
アメリカやイギリスのように規制による消費者保護も多死社会の日本にとって重要だ。ただし、それにとどまらず、中国のように新たなビジネスモデルの追求も必要だ。
葬儀業界で現在起こっている変化は他産業と大きな差はない。人口動態の変化、コロナ禍の影響、新興企業の台頭、IT技術の発達などは、どの産業でも直面する問題だ。
葬儀業界は「我々は特殊な業界だ」という言い訳に逃げ込んではならないと考える。むしろ、消費者のニーズに機敏に呼応し、確固たる成長産業にしていく覚悟が必要であろう。
(フロンティア・マネジメント 代表取締役 松岡真宏、フロンティア・マネジメント ディレクター 渡邉 あき子)