アメリカやイギリスでの
葬儀に関する法規制

 業界内のタフな競争による副産物として不正の増加がある。葬儀は各人にとって一生で何度も行うものではなく、情報劣位となりやすい消費者側と企業との間で情報の非対称も生じやすい。

 不正増加の背景には、葬儀事業や葬儀事業者を規制する法律がなく、誰でも葬儀社を名乗れる現状がある。葬儀費用はブラックボックス化しやすく、不正請求などトラブルも増加傾向だ。葬儀費用に関する国民生活センターへの相談は、2020年の686件から2022年には947件に増加した。

 全日本葬祭業協同組合連合会は、兼ねてより事業者届出制度の導入を要請している。2022年には国会予算委員会で厚生労働省副大臣が国内外の実態調査に取組むことを表明した。
 
 アメリカやイギリスでも葬儀の低価格化は進んでいる。欧米の葬儀は土葬という我々のイメージと異なり、最近では費用がかさむ土葬よりも安価な火葬が増加し、火葬比率は60%以上となっている。

 この2国でも葬儀業者による葬儀費用のブラックボックス化が問題となっている。アメリカでは1984年に連邦取引委員会が、イギリスでは2021年に競争・市場庁が、それぞれ葬儀に関する規制を定めた。

 これらの規則は不当な事業者から消費者や他の事業者を守ることを目的とし、イギリスでは葬儀業者による病院や老人ホームへのインセンティブ禁止なども織り込まれている。イギリスの生命保険会社Sunlifeが行った調査によれば、約9割の葬儀関係者がこの規制をポジティブと感じているようだ。