新日本酒紀行「六歌仙」玉苗の圃場 Photo by Rokkasen

中学生で酒蔵を継ぐと決心!地元密着の米で醸す酒

 20年以上前にいち早くスパークリングサケを開発し、五段仕込みの純米酒など技術に定評がある六歌仙。山形県産米に特化し、雪女神、出羽燦々、出羽の里、つや姫など米の違いを楽しむ「山法師 純米吟醸」シリーズが人気だ。「清酒だけで50種以上、本格焼酎にリキュールと、種類が多いのがうちの強み、酒のデパートです」と4代目の松岡茂和さん。中でも特別なのが、地元の村山産業高校の生徒が育てた玉苗(山酒4号)の酒。地元の米問屋と、高校の前身の村山農業高校が共同で開発した米だ。

 茂和さんが蔵を継ぐと決めたのは中学生の時。中学校の三者面談で父、茂暎さんが「おまえが酒蔵を継がないなら廃業する。継ぐなら大規模設備投資をするが、どうする?」と先生の前で聞いたのだ。中学生には重過ぎる選択だったが、「継ぎます!と答えちゃいました」。その後、茂暎さんは言葉通り設備を導入。外界と隔離されたタンクや製麹機を、宇宙船の管制室のような操作盤で管理を行う最新鋭の酒蔵へ。「先代杜氏は、俺が見張られてる、機械は嘘をつかないからと。あくまで機械は手足の一部にすぎません。人の感性が頼り」(茂和さん)。敷地内に古民家を移築し、販売と試飲を年中無休で行う。秋の蔵開きや、冬の蔵参観、雪中熟成酒の掘り起こし体験など、社員発の企画が多数。お客様に楽しんでもらおうと全員で動く。「うちのモットーは、出る杭を伸ばそうです。六歌仙、元気だねと言ってもらうことが、何より嬉しい」と茂和さんは笑顔。